陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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プロローグ ―――ストーリー・モーメンタム

 台東区の路地裏に、その店はある。

 貰った地図を頼りに探すのは初めて来ることもあって、若干苦労した。路地裏と言う事もあったが、そこまで知名度が高いわけではないという事も一因だ。春になれば高校三年になり、すでに始めている受験勉強の合間を縫って家から離れた台東区へとやってきたことには理由がある。

 キリトと言う人物からのメールだった。知らない人物からのメールだからそのままジャンクメールとして処理しようと考えたが、、不思議とその名前を見たら”見るべきだ”と自分の何かに訴えられた気がした。ウィルスだったら危ないだろうな、等と感想を抱きつつメールを見た結果、

 それはSAO帰還者からの、SAOでの兄を知っているという人物からのメールだった。迷うことなくメールに対して返信を送り、その話に飛びついた。台東区にダイシー・カフェという店があるから、そこで会おうと。

 予想していたよりも少し時間がかかったが、目的のカフェへと到着する。カフェの扉を開けるとドアにつけてあるベルがなり、来客を知らせる。カウンターの向こう側にいる褐色の大男の存在に驚くが、エプロン姿が何となく似合うと思う。


「いらっしゃい! 適当に座ってくれ」

 見た目完全に外国人だが、流暢な日本語を喋っている事から日本生まれか、長く日本に住んでいるのだろう。

「えーと、ここでキリトさんと待ち合わせしてるんですけど……」

 少しだけ躊躇するが、扉を閉めてもう一歩カフェの中に踏み込む。一月と言えども外はまだまだ寒い。暖かいカフェの空気を外へ逃がす理由はない。首に巻いたマフラーを緩めながら中に入った店内、片手をあげて此方を手招きしている姿がある。黒髪に、黒一色の服装に身を包んだ、線の細い少年だ。

「こっちこっち」

「あぁ、サイアスの……」

 そう言って店主らしき男が店の奥へと引っ込む。手招きする少年に接近し、横となるカウンター席に座る。

「初めまして、俺はキリト」

「初めまして、最上正樹です」

 互いに手を差し出し、握手を交わす。握手を終えたところでキリトが口を開く。

「じゃあ早速話に入るけど、俺は……君の兄さんの最期を見た」

「……え? いや、兄さんの最期って……」

 生きているともいえないが、生命活動停止してないんですけど……。

 と、キリトが両手を振る。

「あ、ごめん、少し言い方が悪かった。最期っていうけどSAOでの最後の話で、SAOの最終決戦にサイアス……君のお兄さんの明広が参加していて、最後の最後で死んだから最期って言っちゃったわけで、えーと……」

「あ、ゆっくりで大丈夫です」

 この二年間は兄の事を知りたくても、まったく知ることが出来なかったのだ。だから数分待つぐらいどうという事はない。目の前のこの少年が自分の知らない兄を知っている。それはずっと聞きたかったことだ。だから目の前の少年が落ち着き、ゆっくりと自分の知らない事を教えてくれるのを待つ。

「飲みな」

 そうやってジュースが前に置かれる。

「えーと、まだ頼んでないんですけど……」

「気にするな。お前の兄貴には皆借りがあるんだよ。この程度じゃ返せない借りがな」

 いったい兄はあの仮想世界の中でどんなことをしていたのだろうか。と、考えた時、

「そうだな、アイツがいなきゃ俺達は今ここに座っていることもないし―――俺もヒースクリフを倒す事は出来なかった」

 ヒースクリフの名は有名だ。あの茅場晶彦の正体がそれだと、SAOから現実に復帰した人が叫んでいた。そういう類の情報はマスコミに高く売れたため、マスコミやネットを通して早く広がった。

 が、不思議と何が起きてどうやって負けたのか、その情報は欠片も存在しない。情報規制にしても完璧すぎる。そして今、キリトはヒースクリフを倒すと言った。つまり、

「君が……」

「恥ずかしいけど、……世間じゃアインクラッド解放の英雄なんて言われてるよ」

 デスゲームに終止符を打った少年が目の前にいる。


                           ◆


 ここで発表されているSAOについての情報を述べるのなら―――SAOは茅場晶彦の敗北によって終了し、今、政府がSAOで時間を失ってしまった人の為の学校を開いている。その程度の情報しか回ってない。残りの情報はほとんどSAO帰還者がネットに流した情報で、その中身は壮絶だった。

「お前の兄、サイアスは俺が知る中でも間違いなく最強のプレイヤーの一人だったよ」

「サイアス……」

 それが兄のキャラクターの名前。兄が二年間使っていた体の名前。

「まぁ、最後の戦いでさ、一度会ってくれって頼まれてたんだけど……遅れてごめん」

「いえいえ、此方も知らなかったわけですし」

 責める理由にはならない。だから落ち着いて知らない事を知ろうと思う。キリトはそうだな、とゆっくりと記憶を探る様にしながら自分のジュースを飲んでいる。自分も貰ったジュースを口にする。

 辛い。

 ジンジャーエールとしては凄く辛い。思わず視線を店主へと向ける。

「それが本物の味ってやつだ」

 辛いが、

「美味しい」

「一応裏メニューで一般的には出してねぇから、秘密で頼むぜ」

 頭を頷かせ、了承を伝えると今度はキリトが口を開く。

「そうだなぁ……サイアスは、えーと明広は……」

「慣れてる方でいいですよ」

「あぁ、んじゃあサイアスで」

 何かこの少年、司狼タイプの人間っぽいなぁ、と思っていると、

「圧倒的に不幸な奴だったよ。サイアスは」

「不幸?」

「あぁ。SAOに参加したこともだけど、アイツ、早い段階で恋人を失ってんだよ」

「う、っぶ」

 思わずジンジャーエールを吐き出しそうになる。

「え、っちょ、こ、恋人? 兄が、兄が恋人!?」

 玲愛や香純の好意に気づいていながら華麗にスルーしてた兄が……恋人? その発想はなかった、と言うよりもほぼありえない事実に対してショックを受ける。それに失ったという事は、

「死んだ……?」

「あぁ、サイアスを庇って死んだんだ。その事で酷く自分を責めてな……一時期犯罪者を殺しまくる殺人鬼になってたんだ」

「兄が殺人鬼……」

 慌ててキリトが手を振る。

「あ、ごめん」

「いや、いいんです。SAO内での犯罪はこっちでは適応されませんし、……まぁ、兄が破天荒だったのは昔からの話でしたし……」

 何があって人を殺すという事を兄が決めたのかは、解らないし理解もできないが―――きっと、そこには壮絶な葛藤が存在したのだと思う。ただ思考もなしに何かを実行する人間を兄に持ったとは思わないし思いたくもない。そういう意味では誰よりも兄を信じていると言える。

「で、まあ……アイツ、自分が不幸でそれに酔っているような部分が一時期あって―――正直近寄れば切るって感じがあって、見ているだけで怖かった。ただそんな存在に救われることもあって、やっぱりいい奴だったよ。サイアスは。正直何度も助けられているし、最後の最後はアイツがいなきゃ絶対に勝つことができなかった」

 最後の最後でいなければ勝つことができなかった。その発言は前にも聞いたが、正直な話、そのスケールでの話となると、少し疑わしくなる。が、キリトは苦笑している。それは真実だと言いながら、

「俺達はあの日―――七十五層のボスを攻略をしたんだ。何人も死んだ。今までにない壮絶な戦いだった。誰もが倒れている中で、立っていられたのが茅場晶彦であるヒースクリフ、そして君の兄であるサイアスだったんだ。サイアスはある事件を経て”システムを超越”する存在となっていたんだ」

「システムを超越? バグかチートですか?」

 チートは嫌いそうだが、バグ技の類は大好物だったなぁ、等と思っているとキリトが首を横に振る。

「チートでもバグでもなく、システム外の”仕様”って説明した方がいいのかな……まぁ、こればかりは説明しても多分理解できない。なあ、エギル?」

 エギルと呼ばれた店主の方へと向くと、

「悪い。正直お前もサイアスもヒースクリフも早すぎて色のついた線にしか見えなかった。俺からしたらお前も十分びっくり人間だぞ」

「勘弁してくれよ……俺、あれ限界超えて頑張ったんだぜ?」

 その光景を想像することはできない。おそらく想像を絶する光景、だとしか予想がつかない。キリトとエギルが二人にしか通じない話を終えたところで、

「まぁ、最終決戦は俺とサイアスのタッグがシステム権限と心意を使うヒースクリフと勝負するって形になったんだ」

 シンイ?

 その言葉に聞き覚えはない。聞こうと思うが、キリトが話を続ける。

「正直足を引っ張り続けてたと思う。サイアスが命と引き換えにヒースクリフを止めてくれなければ絶対に勝つことができなかった。まあ、サイアス自身は死ぬ覚悟が出来てたっぽいけど、直後にクリアしたおかげで死んでないって話を政府の役人から聞いたんだ。だけど調子は……まぁ、なんとなく解るかな」

「あはは……」

 苦笑しつつ軽く頬を掻く。政府の人間とコンタクトが取れていることを見ると、それなりに顔が利く人間なのかもしれない。しかしこちらの事を把握しているとなると、

「それで、本題は?」

「あー、やっぱり話に来ただけじゃないって解る?」

「えぇ、まぁ、それは」

 キリトが頬を掻いて、喉を潤すためにジュースを飲む。話すだけだったらこんな人払いの済ませてある店に来る必要はないのだ。休日の午後、本来なら人が多く入る時間だ。にもかかわらず人払い、そして店外には”貸切”と書かれていた。そのため入る事に一瞬だけ躊躇したのだ。

「じゃあ」

 と、キリトが話す。

「―――マリィって名前には聞き覚えがある?」


                           ◆


 マリィ。

 聞き覚えのない名前だ。だから頭を横に振って、知らないと伝える。そうか、とキリトが短く息を吐きだし、

「マリィって女性がサイアスの事をアインクラッドで支えてたみたいなんだ。最初に恋人を亡くした話をしたよな? どうやらその後から支えてた様なんだけど……」

「うーん、聞いたことないです、ねぇ……」

 そうか、と、短くキリトが呟くのと同時に、懐から一枚の写真を取り出す。

「俺も少し前にこれを見たばかりなんだけど」

 そう言って写真を手渡される。元々は解像度の高い写真だったのだろうが、ズームしているため荒くなっている。上手く見る事が出来ないが、おそらく中央に映っているのは鳥かごと、その中に閉じ込められた”二人”の女性だ。片方は栗色の髪の女性で、もう片方が金髪の女性だ。

「その金髪の方がマリィっていうんだ」

「これは―――」

 何かを言おうとする前に、キリトが喋りだす。

「なあ、サイアスが今どんな状況かは菊岡から聞いたんだけどさ」

 また、知らない名前だが、

「―――俺も言いたい事があるんだ。色々と助け出すついでにあの馬鹿、起こさないか?」

 キリトとの唐突な出会いと、誘い。その言葉を聞いて感るのは戸惑いだった。
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| 断頭の剣鬼 | 12:25 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

前作より面白い展開で
オラ、すげえワクワクすんぞ!
応援しています

| モグラ | 2012/08/28 17:05 | URL | ≫ EDIT

キリトとサイアスの二人でのALO攻略とか、しかも司狼もこれ来るんだろうな…w

なんか妖精の世界が血に濡れそうな予感w

| 裸エプロン閣下 | 2012/08/28 17:12 | URL |

うむむ。
今気付いた。サイアスの状態と同じようなの、ネット版アリシ編であったなぁ。
そしてやっぱりワクテカが止まらないw

| 羽屯十一 | 2012/08/28 17:39 | URL |

ALO編ktkr。
でも世界崩壊フラグしかしない……!!

二人を助けようとキリトとサイアスが絶対何かしでかしそうな気がしないでもない……AMEN。

| 蒼桜 | 2012/08/28 22:43 | URL |















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