陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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IF外伝 境ホラ6

 ―――道は出来た。

「本多・二代」

「Jud.何で御座ろうか」

 横に女武者が立っている。武蔵で、葵・喜美と相対した女が横に、最初は敵として、そして今は味方として立っている。その実力を肌で感じ取った人間としてはその存在は心強い。だから彼女を歓迎する。

「むぅ」

 マルグリットが少し離れた位置で頬を膨らませている。が、ポーズだけで本当は許してくれているのは知っている。マルグリットを流石に戦場に連れて行くことはできない。武蔵に置いて行くことになっている。浅間同様、武蔵で活躍してくれるはずだ。だから、


「これよりお前を俺の部下として、副長補佐として迎えいれる―――いいな?」

「Jud.了解したで御座る。しかし拙者は―――」

 それを遮り、言葉を放つ。

「―――姫に仕える身だろう? 侍の本分を忘れないのはいいが自分の立場、そして責務も理解しろ。お前は本多・二代であり、本多・忠勝の娘だ。どこへ行こうとその名と立場はついてくる。それを忘れるな。そして慣れろ」

「Jud.」

 短い返答だが、此方の言葉の意味を承知している。おそらくそういう覚悟もあるのだろう。それを確かめられただけでもいい。無駄に張りつめていた緊張をほぐし、もっと柔らかく言葉を作る。

「俺の事は好きに呼んでくれ」

「では明広殿と」

「俺も気軽に二代と呼ばせてもらうぜ」

「むぅ」

 頬を膨らませたマルグリットが少し離れた位置から嫉妬の視線を浴びせてくる。可愛い姿だが、何時までもそうさせているわけにもいかない。

「あそこで頬膨らませているのが俺の嫁。可愛いだろ? なあ、可愛いだろ? アレ俺の嫁なんだぜ? 俺神州一の幸せ者だぜ? ぶっちゃけマリィ見てるだけでトーリの告白とかどうでもよくなる」

「どうでもよくねぇYO! おめぇ一瞬前までシリアス全開だったのにそこでどうして俺の名前が出てくるんだよ!」

「マリィが可愛いからさ!」

「お前、たまにそれだけで芸人の俺を超越してるところあるよな。ガキの頃から」

 あ、頬に手を当ててくねくねしてる。とりあえずご機嫌取りはこれでよさそうだ。トーリは放置しよう。誰が好んで危険物に手を出すものか。

 ともあれ、

 後ろへと視線を向ける。

 横に並んで相談しながら歩いてるのは総長連合に生徒会の皆。それに続くように後ろからついてくるのが三河警護隊の隊員約百五十人、そして武蔵の学生で戦闘可能な者約五百五十人。聖連―――K.P.A.Italiaと三征西班牙の学生が報告によれば千八百人近くいる事を考えれば少なすぎる。一人一殺何てレベルでやってたらあっさり全滅する。

 戦いの鍵は間違いなく連携と、役職者による活躍、そして大罪武装の投入タイミングだろう。

 さて、

「おい、貴様ら!」

 学生たちの注意を集め、

「嫁持った男に指揮されるのと、フリーの侍美少女に指揮されるのとどっちがいいー?」

「美少女ぉ―――!!」

 ハモった返事が返ってくる。やはりここら辺は欲望に素直だなぁ、等と思いつつ親指で首をかき斬る動作をする。本当にこいつらいい根性してやがる。

「貴様らこの戦いが終わったら待ってろよ?」

 地獄を見せてやる。

「今の質問に意味は……」

「ない」

「そうで御座るか」

 特にそれ以上の質問をしてこないのは二代がノリに慣れているからと見るべきなのだろうか。三河も武蔵の住人がいる事から結構ノリに近しいものがあるのかもしれない。いや、適応力を見ると忠勝辺りで慣れていたのかも。

 段々と武蔵の、港へと降りるための橋が見えてくる。忙しそうに表示枠を出現させているネシンバラが此方へと向かって走ってくる。

「さっきから結構いい空気吸ってるみたいだけどいい?」

「問題ない」

「そう。もう本多君……あぁ、二人もいて面倒だから槍本多君でいいや。えーと槍本多君を組み込んだ? うん、よし。これでこっちと情報の共有とか浅間君がしてくれるはずだから。指揮関係は警護隊を本多君に、学生の方を嫁馬鹿に任せるよ。どうせ今から連携とか考えても無駄だろうし、いつもと違うことをやらせるよりは慣れている事をした方がいいでしょ?」

 ネシンバラが次々と表示枠を浮かべながら指示をだし、此方にどう動くべきかを伝えてくる。その情報を此方の表示枠に共有しながら、全て脳の中に納めてゆく。今合流したばかりの二代や三河警護隊と無理な連携は出来ない。人員が増えることは好ましいが、無理に慣れない事を強要して長所を潰したくない。

 誰もが目前の一戦に対して気合を入れ、準備をしている中で、ある一つの事に気づく。

「……総長は?」

 誰かがそう呟いた。その声に釣られるように周りを見渡すと、確かにそこに馬鹿の姿がない。おかしい。誰よりも意欲的に今回の騒動に加担していたのに。そんな事を思いつつ周りを再び見渡すと、

「おいおい! オメェラ何やってんだよ! 早く行こうぜ!」

 馬鹿が戦場に突撃してた。

「誰かあの馬鹿を止めろぉ―――!!」

 トーリを追いかけて武蔵を飛び出すのと同時に、武蔵対K.P.A.Italiaの戦争が開始した。


                           ◆


 開戦を告げたのは大砲の砲音だった。非武装が基本となっている武蔵ではありえない攻撃方法だ。遠距離から、三河に存在する山の向こう側から放たれた砲撃は放物線を描きながら狙ったものを破壊するように着弾する。狙われたのは武蔵ではなく、武蔵を陸とつなげる橋。それはつまり、

「増援と退路を切ってきたか!」

 それはもちろん致命的な損失とは言わないが、陸戦部隊をまだ武蔵に置いてあったとすればキツイ話だろう。航空戦力を出す事に問題がないのが幸いだ。

「これより二手に分かれる! 東回廊を副長補佐本多・二代率いる三河部隊、西側は俺が率いる武蔵アリアダスト教導院の学生部隊で行く。両回廊共に激戦区となることが予想される。気を引き締めろ!」

「Jud.!!」

 勢いのある返事と共に部隊が二つに分かれる。

 圧倒的に数の違いがあるこの戦闘で二手に分かれるのは愚策なのだろう。愚策なのだが、それでも三河から武蔵へと通じる道は一つではない。西側回廊、そして東側回廊が存在する。もちろん相手は両側から進軍してきている。どちらかを通せば確実に武蔵が落とされる。故に二手に分けざるを得ないのだ。その殊に歯痒さを感じつつも、

 砲撃をかいくぐりながら進む。

「術式防御展開! 神道は硬さではなく柔軟性が売りだ! 正面から受け止めずに流す様に防御しろ!」

「Jud.」

 先頭に立つ学生たちが防御を展開し、正面から飛んでくる砲撃を防ぐ体勢に入る。一番は防御する事ではなく、回避する事だがそこまで要求するのは酷だ。

 と、

 飛んできた砲弾が防御をしている学生を越え、

「あ、ちょっ」

 機動殻を装着しているアデーレに衝突し……砲弾の方が弾かれる。

 なんだか痛そうにしてるけど生きてる? 生きてる? うん。生きてるね。え? 痛い? 破損率は? 低い? 低いね? これどう思うメガネ? うん、そうだよね。盾だよね。スピードがでない? 盾にスピードはいらないだろ。うん。決定だね。

「メイン盾確保ォ―――!!」

「ちょ、ぺ、ペルソナ君何をしてるんですか? 快適にするって? え、ちょ、あいたぁーっ!」

 正面から飛んでくる砲弾に対してペルソナがアデーレを持ち上げ、防御する事で砲撃から身を守る。それですべて防げるわけではないが、何もないよりは断然マシだ。異常な防御力を誇るアデーレの機動殻に感謝しつつ、聖連の部隊に接近する。軽く空を盗み見る。

 前方、聖連側から武神戦力が出動するのが見える。横の表示枠からメガネが魔女に武蔵の制空権を確保する様に指示を飛ばすのが見える。航空戦力に関しては魔女に任せる以外に今、方法はない。勝利することを信じ、目の前に見えてきた聖連の部隊に対し、

「矢を放て!」

 後列から矢を撃ち込ませる。まだ距離があり、すべて命中するわけではないだろう。だがそれでも相手に防御の姿勢を取らせることができた。前面から長銃による射撃が緩まる。その隙に身体強化の術を発動するように合図を送り、

「総員近接戦闘用意―――」

 ここで考える。

 もし、自分に、あの黄金に匹敵するだけの将器があればこの戦い、一切の犠牲なしに勝利できるのだろうか。実際にはその可能性は皆無で、考える事すら馬鹿らしいが、それでも考えてしまう。喪失を恐れる今となってはそういう考えがまず頭に浮かぶ。ただ切り込んで剣を振り回せばいい身分ではなくなったことも理解している。副長は武の模範であり、前線指揮官でもある。

「―――この一戦に武蔵の未来がかかると思え!」

 叫び、誰もが武器を構え、

「Jud.!」

 返事と共に正面から衝突する。


                           ◆


 部隊が正面から衝突するのと同時に感じられたことは、

 ……弱い……!

 力ではなく、三征西班牙の部隊からの感触がだ。そこに押し返す力が入っていない。あくまでも此方の攻撃を受け止めるだけ、それだけの力しか籠められていない。そこで、前衛の裏に隠れる存在がやっと見えるようになる。

「来るで御座るよ!」

 反応したのは点蔵だった。その言葉の直後、槍を持った学生が後ろから現れ、正面の武蔵の学生に襲いかかる。衝撃と共に吹き飛び、血を流す仲間を見ながら思い出す。

『テルシオだよブルイユ君!』

「しってらぁ!」

 テルシオ、史実によるとスペインの槍兵と銃兵を組み合わせた防御に特化した陣形だ。それに術式による防御が合わさっているため、人としての強度が更に上昇している。三河消失の事件で三河の自動人形や本多・忠勝に戦力を多く削られたはずなのに、それでも疲れを見せずに戦うのはさすがというべきだろうか。

 テルシオなら槍が出てきたところで―――射撃が来るはずだ。

 だから、そうなる前に、体を動かす。


                           ◆


 風よりも、音よりも早く一瞬でテルシオの壁を突破する。接近し、殴る。たったそれだけの動作で明広という存在がテルシオの第一の壁を突破する。理不尽と言えば理不尽だろう。だが現在の戦場で、役職持ちがそうでない一般の学生を蹂躙するという光景自体は珍しくない。だからその光景は然して驚くべきものではない。

 ただ、その道を塞いでいた存在が悉く斬首されている事態は驚くに値する事だった。

 前に進んだ副長、ブルイユ・明広の両腕は赤銅色に染まっており、それが首までを染め上げていた。その両腕は血に濡れて赤く染まっている。素手による斬首、人間業とは言えないそれは魔人や鬼族にならばたやすく可能だが、この男は種族としては人間に類する。故に異常性が見えてくる。

 何より、喪失を防ぐ、その武蔵のあり方を真っ向から否定していた。

「―――ここに宣言しよう」

 明広の口が開き、

「”用無し”は決して―――喪失を恐れぬと」

 テルシオに更に深く踏み込んだ。


                           ◆


「あー、やっぱりそうなっちゃったか」

「やっぱりとは? ―――以上」

 ”武蔵”と共に表示枠を通して戦場を見ている。この戦争、明らかに武蔵側の不利だ。政治的にも、武力的に見ても。別の表示枠では魔女が武神と空中戦を繰り広げているが、状況は悪い。だが今、地上では副長である明広がテルシオを内部から崩すため、単身飛び込んで多くの敵を吹き飛ばし、斬首している。

「俺、あの子とは結構長い付き合いになるんだよね」

「私が覚えている限りですと十年以上の付き合いですかと。―――以上」

「まぁ、そんなわけでずっと前から見てたんだけど―――完成してるんだよな」

「もったいぶらずにキリキリ話した方が宜しいかと。―――以上」

 ”武蔵”の辛辣な言葉に軽く苦笑し、茶を口に含んで昔の事を思い出す。昔、まだ梅組の少年少女たちが覚悟を決めていなかった頃の話だ。あの副長、明広だけはある程度完成されていた。その戦闘力や戦い方に関してではなく、その生き方だ。優しく言えば、

「汚れ役かな」

「汚れ役とは。―――以上」

「うん、そうだね……”武蔵”さん。”武蔵”さんはトーリ君たちが誰も失いたくないって言ってさ、がんばっているのは解るよね? でもこの戦いで誰も失わずに勝利することができるって思うかい?」

「不可能です。現に既に死者も負傷者も出ています。トーリ様のおっしゃっている事は理想論で、現実は違います。ですがそのためにトーリ様は今戦っておられるのかと。―――以上」

「まぁ、そうだよね」

 だが現実は、理想論だけではだめなのだ。理想だけで世界は動かせない。今回の件も理想を言うだけでは動かない。正純が教皇総長と相対し、大義名分を作ったからこそ実現した相対であり救出であり、そしてホライゾンの救出には既に犠牲が発生している。理想は理想だ。

「理想ってのはさ、厄介なものだよ。捨てられないしずっと見ていたくなるし、叶えたくなる。力になるんだよ―――実現不可能でも。危ないよ、理想は。特に叶えるだけの力を持っているとね」

 なぜなら、

「それは付け入る隙にだってなるんだ。トーリ君が”誰も失わない”っていうんだったら、それを理由に”なぜ戦いに介入する”って抗議を相手に許す事になるんだ。その時には理想を語っても無駄なんだよ。仕方がないと何かをあきらめるしかないんだな、これが」

「つまり明広様はリアリストであると? ―――以上」

「いや」

 やはり苦笑する。こればかりは見ていなきゃ解らないだろう。

「あの少年は自分から進んで汚れ役を買う事で武蔵の弱さを潰そうとしているんだ。”喪失させない”という武蔵に所属し、喪失を恐れない事を見せることで”武蔵には喪失を手段として取るものがいる”という事を印象付けているのさ。それがどこまで他国に通じるかわからないけど―――だから”用無し”という字名を気に入ってるんだろうね」

 喪失を恐れ、それを防ぐ武蔵では喪失を生み出す様な戦い方をする自分は不要であり、用のない存在だ。だからこその”用無し”。だけど、

 だからこそと言うべきか。

「アイツ、多分一番ロマンチストだぞ。本気でトーリの作る国を信じてる」

「要約すると―――貧乏くじになりたがりのマゾのロマンチストですか。救いようのないようでマルグリット様が苦労しそうです。―――以上」

 その言葉に笑うしかない。あの二人は二人一緒でバランスが取れているのだ。

 さて、

「ここが正念場だぞ」

 聖連の船から飛び立つ鋼の存在を見て、自分の生徒たちの勝利を祈る。
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| 断頭の剣鬼 | 10:03 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

妖怪閣下・・・・・始動

つーか閣下が指揮してるのは新鮮だわ

| tom | 2012/08/27 19:40 | URL |















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