陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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IF外伝 境ホラ5

 ―――何をして欲しいか、か。

 頬杖をつきながら目の前の原稿用紙を睨む。昨日の夜は色々とありすぎて困った。本多・二代との相対の後にすぐに武蔵に戻ってきてよかったと思う―――おかげで三河に足止めされずにすんだ。ただ戻ってこれたとはいえ、今の状況を打破する具体的手段を思い浮かばない自分では出来る事が少ないから、結局のところ居ても居なくても大差ないかもしれない。まあ、考えるのは生徒会に任せる。

 ともあれ、

 ……何をして欲しいかかぁ……あんまし深く考えるべきじゃないとは解るんだけどなぁ……。

 深く考えれば考えるほどドツボにはまるような質問だ。

 P-01sがホライゾンであり、そして最新の大罪武装であると発覚し、彼女が三河消失を取るために連行されてから一夜―――武蔵にとって状況は、最悪と言っていい方向に転がっている。生徒会は副会長を抜いて全員が権限を剥奪されている。総長連合は生徒会と違って政治には関わっていないため、今の状況では無力だ。戦いとなれば話は別だが、今現在は、

 相対する事さえ封じられている。

 何をしてほしい……。

 そう問われて今、一番最初に頭に浮かぶことは、

 ―――許してくださいマルグリット様ぁ……!


『つーん』

 許しを請うが繋がりを通して聞こえるのは可愛らしい怒りの声。昨日、本多・二代との相対の際に二代の胸を揉んだのがいけなかったらしい。アレは酒井学長直伝の対女性用の攻略術なのだ。そう、戦闘を終わらせるのと同時に死亡フラグを立てる事の出来る斬新な技なのだ。サボリ仲間としては一度でもいいから使いたかったが、身内にやると結論から言って社会的に抹殺されるので身内以外の人間が必要だった。それで今回いい機会だったので実行したが、やはり左遷された落ち目の男のいう事を真に受けるべきではなかったのかもしれない。

 つまり、この作文に書くべきなのは、

 許してほしい……!

 まぁ、そんな事を書いたらクラスからまた集中砲火を浴びせられるので止めておこう。

 視線の先には一枚の表示枠が浮いている。その中では三河で本多・忠勝から立花・誾に渡された神格武装”蜻蛉切”が、極東側に返却されている。相手が動き出すよりも先に相手から受け取ろうとする本多・二代の動きは、まだ極東の意志は死んでいないことを示すためか。

 戦ってるんだなぁ……。

 戦い終わって少しだけ二代と話す時間があったが、まだまだ行く末に悩んでいる様子だった。まだ漠然とした未来しか見えてない、そんな風に感じた。まぁ、極東、特に武蔵と三河で未来を考えるという事が難しいのは解っている。十八歳で卒業という学生の年齢制限があるこの二つの教導院では、どんなに望んだとしても、本格的に政治や学生間抗争といった国の運営には関わることができないのだ。だから必然的に選べる未来とは、国の運営に関わらないものとなる。あの年齢で、あれほど武を磨いたのに、それを活かせず卒業することになるのはさぞや無念だろうなぁ……。

『そんなに二代が好きなら結婚したら?』

 俺は! マリィが! 好きなの!

『つーん』

 あぁ、マリィイイイイイ……!

 心の中で会話が通じるのはいいが、口に出せない分なんだか空しく感じる時がある。やはり言葉は口に出してこそ意味があると思う。よし、後で口に出してマリィへの愛を叫ぼう。とりあえず武蔵に響くぐらいの声で。

『ま、待って、アキ、それは駄目!!』

 俺の副長としての威厳と引き換えにマリィの愛を掴めるのなら本望……この副長、”用無し”明広、我が生涯に一片の悔いなし。女神の愛さえあれば俺は生きていける。

『本当は許してるから、だから、ね? 考え直そうよ?』

 許されているのか……じゃあこれは喜びの叫びを武蔵中に響くように思いっきり叫ばなくてはいけないな。あぁ、それでこそ愛は証明できるのだ。

「どうしよう……アキが止まらないの……」

 マリィが何やら呟いているがよく意味が解らない。ともあれして欲しかったことが叶ってしまったので、第二候補を思い浮かべなくてはならない。表示枠を通して、蜻蛉切の返却が極東の敗北で終了するのを眺め、名乗りを上げる二代の姿を見る。

 ……名乗りか。


                           ◆


 名前とは、その人を表す大事なものだ。最上・明広として生まれ、サイアスとして戦い、そして今、ブルイユ・明広という名で武蔵で生きている。最上の名は平和な生活のために捨てなければならなかった。だがあの日、善鬼さんに助けられたあの時は、俺は俺を名乗って、その後偽名を使う事になったとしても、俺として今日まで生きてきたつもりだった。だが、

 どうなんだろうな。

 今の俺は、いったい”誰”なのだろうか。

 現実世界で生きてきた最上・明広か、剣鬼のサイアスか、それとも名前を偽るブルイユなのか。どれが俺の本質を表す名前なのだろうか。全てが俺を表す事に間違いはない。だが、その中で俺の本質を的確に表すのは―――どれだ?

 だから、

 俺のしてほしい事とは。


                           ◆


「はい、そこまで」

 オリオトライが止める。クラス全体を見回して、大体全員が書き終わったことを確認してからの事だ。原稿用紙を何枚も使って書く者もいれば、短くまとめあげる者もいる。この状況で、真剣に自分がしてほしい事を書ける人間というのは少ないだろう。オリオトライはそう判断しながら、

「浅間、あんた結構書いているようだったからトップバッターね」

「え、あ? せ、先生! これは―――そう、してほしい事じゃないんです!」

「じゃあなんなの?」

 授業中熱心に書いていた浅間の事だからまともな事を書いていたのだと思ったが、どうやらそうでもないらしい。

「これは……術です! この部屋のヨゴレを集めて文章として封じ込めていました! えい! こんなもの! こんなもの!」

 何やら浅間がいい空気を吸っているようなのでそのまま放置する。こういうのは一旦落ち着くまで待った方がいい事を、教師としての経験が教えてくれている。だからその横にいる、まだ選びやすそうなのを選択する。

「そんじゃブルイユ夫、頼んだわよ」

「まだ結婚してないんですけどね……」

「卒業してからじゃないと駄目なのよねー、ほら、話題をそらさずに」

 ういっす、何て返事をしながら明広が立ち上がる。原稿用紙を持ち上げ、それを見ながら、

「―――名前を呼んで欲しい。以上」

「もう少し書きなさいよ」

「えー。長ったらしい文章書くのはオタクに任せる」

「うん? それは僕の新作を発表しろって事なのかな?」

「廊下で立たせるわよ」

「理不尽だ……」

 明広がたったそれだけで終わらせ、席に着いた。馬鹿みたいに短く、アホな願いだが、それだけに笑う事は出来ない。それが誰へと向けられたことか理解しているから。

 全く、教職も楽じゃないと思う。充実しているが、同時に生徒たちを理解し、導く立場だから―――若い学生たちが国を運営するこの極東においては一番大事で、大変な職業なのだろうと思う。いろいろと難しくて責任重大な仕事だけど、充実していると判断する。だからこんな日々を続けるためにも、

「そんじゃ鈴のいってみようか?」

「あ、これ、私が代わりに読みますね」

 今も机に突っ伏し、何も返事をしない葵・トーリを動かすために必要な、最後のカギを持ってくる。


                           ◆


 向井・鈴という少女は目が不自由だ。それは今に始まったことではなく、昔からずっとそうだったのだ。目が不自由だったために派手に運動する事は出来ず、周りを探るセンサーなしでの生活は不可能だった。そんな鈴に関わろうとする生徒は少ない。それはそうだ、子供は基本的に自分勝手な生き物だ。自分さえよければそれでいいのだ。身勝手とは言わないが、残酷だとは言える。幼い頃の行動を咎めるのは難しい。難しいからこそ長い間傷として残る。

 だけど、向井・鈴は幸運だった。

 幼い頃、初等部の鈴はトーリとホライゾンに出会う事が出来た。鈴は自己主張しない子で、いつも陰に隠れているような子だ。それでもトーリとホライゾンは彼女を見つけ、手を握った。目が不自由な鈴の為に制服につけた鎖を軽く揺らす事で接近を教え、階段があれば手を取って登った。ホライゾンとトーリが最初に始めたそれを、皆が真似して、鈴は一人ではなくなった。

 だからこそ、

「おね、がい、トーリ、君!」

 鈴の声が悲痛なものとしてクラスに響くのだ。

「ホライ、ゾンを、助けて! わたし、に、は、できない、から……おね、がい……!」

 鈴の視線の先で机に突っ伏し、無反応だったトーリが鈴の声に反応し、上半身を起き上がらせる。そこに無気力や悲しみは見られない。席を立ちあがり、サムズアップを鈴へと向けるトーリは今まで通り、気力溢れる姿だ。

「おいおい、安心しろよベルさん。俺、葵・トーリはここにいるぜ」

 その姿を見て、誰もが安堵しているのが分かる。やはり、梅組の中心はこの馬鹿なんだろうな、と思い、

「おい、貴様今まで何をへこんでた」

「へこんでなんかいねーよ! ちょっと俺のマスラオゲージ溜めてただけだよ! 何か感じからして十ゲージ分はたまったぜ……!」

「そうか。俺たちはお前のマスラオゲージが溜まるのを待ってたのか。こいつ殺そっか」

「おいおい、止めてくれよ! それにベルさん」

 トーリが鈴へと言葉を向ける。

「言われるまでもねぇぜ、ホライゾンに俺はコクらなきゃいけねぇんだ。だから―――おい、やること、俺は解らねぇけど、もう思いついたんだよな?」

 最後の言葉は鈴へとではなく権限を剥奪された生徒会へと向けられた言葉だった。その言葉に反応したのはネシンバラで、表示枠を出現させながら、Jud.と答える。

「もちろん思いついたし準備も完了してるよ」

「んで、何をするんだ? セージュンが俺たちの敵である間は俺たち何もできないぜ!?」

「だからこそ―――本多君を此方に引き入れる」

 表示枠を増やし、ネシンバラが説明を始める。

「そうだね。今の生徒会で唯一権限を保持してるのが本多君で、残りは暫定議会の預かりとなっているわけだ。だから僕たちからは何もできないし、何も動かす事が出来ない。本多君が権限を保持していられるのは一に暫定議会側の人間だから、二に一人でも生徒会で権限を保持している人がいると色々と動かしやすいからだ。だから、本多君を引き入れる」

 手を持ち上げて、ちょっとだけアピールする。

「んじゃあメガネ。どうやって正純引き入れるんだよ。アレ、毎朝のランニングで死にかけるほどに貧弱だけど、頭は凄いぞ? 多分この武蔵で一、二を争う政治能力の所有者だ」

 その言葉に対してネシンバラがメガネを整え、得意そうな顔を浮かべる。一瞬でもウザイと思ってしまうのは仕方がない事だと思う。

「だからこそ本多君を引き入れるんだ。僕たちの最終目標は聖連からホライゾンを救い出す事だ。まずそこに到達するためには暫定議会と本多君を破る必要がある。そしてそのあとには聖連、教皇総長と戦争を始めるための政治的やり取りがあるはずだ。僕の見立てじゃ本多君じゃなきゃそこまで持って行くのは無理だ」

「でもよ」

 と、トーリが割り込む。

「今の俺たち無力だぜ? どうやってセージュン引き出すんだよ? やっぱ全裸になって踊るのか!?」

「脱ぐな馬鹿が」

 トーリを止めたのはシロジロだった。

「おぉ、うんじゃあどうなんだよ守銭奴。俺、これかなりお前向けなビッグビジネスだと思うんだよ。なあ、何もできないし解らない俺のために教えてくれよ―――どうするんだよ」

 クラスの皆の胸に、再び火が灯る。いや、既に灯っていたのだろう。ただそれが今、前よりも燃え上がっているだけで。ビジネス視点から話し出すシロジロの姿を眺めつつ、思考する。

 ―――来るな。

 この流れはいい流れだ。おそらくだが……いける。いや、いけると信じている。となれば政治的やり取りの後で待っているのは戦争だ。そこから、初めて俺の出番となる。その時―――俺は迷わずに持てる全てを発揮しなければならない。

 俺は、改めてホライゾンに謝らなければならない。

 あの時、あの場所での、

 ホライゾンの喪失とトーリの喪失、俺はアレを止める事ができたはずだ。どんなに幼かろうが永劫破壊はこの身に宿っていたのだ。使わなかった事、使用を恐れてしまった事は怠慢だ。慢心だ。迷いだ。もう、あんな躊躇はしない。

 今度こそ、絶対にこの刹那を守って見せる。

 ―――武蔵、権限を剥奪された生徒会の反撃が始まる。




 あたりまえですが小さい部分で原作とは違います。そりゃあ人が一人はいればセリフも行動も変わるでしょ。
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| 断頭の剣鬼 | 10:47 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

>>あたりまえですが小さい部分で原作とは違います。そりゃあ人が一人はいればセリフも行動も変わるでしょ。

最近のラノベ原作の2次小説だとオリキャラ入ってても、原作の文章をなぞるだけ、という作品が殆どなんですよねぇ…。

早く妖怪のヒャッハーが見たい。

| reficul | 2012/08/26 11:27 | URL |

やっとおいついた。
こうずっと読んでいると原作で物足りない感があるのはきっと私だけじゃないはず。
寧ろそう感じるのが遅いのか……!

怒ってるマリィが可愛いです。流石女神様。

| 蒼桜 | 2012/08/26 21:51 | URL |

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| | 2012/08/26 21:52 | |















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