陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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IF外伝 境ホラ4

*1推奨BGM:唯我変生魔羅之理


 武蔵が停泊している陸港から三河へとたどり着くには二つの関所を通る必要がある。一つ目の関所は通るのにそこまで苦労はないが、二つ目は三河への入り口だ、それなりの警備が存在する。役職者ということでとおれるのは一つ目の関所までだ。だが酒井・忠次が言うには待ち合わせは一つ目の関所を抜けた先で、二つ目の関所の前だ。そう長くいられるわけではないが、戦国最強とも言われる”本多・忠勝”の名を襲名した者との出会いはいい刺激になる。

 そう言われてついてきたが、

 ……これ護衛に使われてないかなぁ。

 横を見て確認できる存在は正純の存在と酒井・忠次だ。酒井・忠次とはサボり仲間でそれなりに親しいが、正純は困ったことにクラスと生徒会、総長連合関係を抜くとそれ以上の付き合いはなかった気がする。こうやって横に並んで歩いていると会話に困る。そんな事を思っていると、

「酒井学長」

 正純が切り出した。

「十年前に、後悔通りでいったい何があったんですか?」

 過去を思いをはせ、罪悪感で胸が痛む。


                           ◆


 後悔通りで十年前と言えば、ある一つの事件を指しているに違いない。正純は今の梅組のほとんどのメンバーの様に初等部から一緒だったわけではない。だから昔、武蔵で起きた事件の多くを知らないから一歩踏み込めていないところがあった。しかし、今、正純は知らない事を知ろうとしている。それは、

 ……俺たちに一歩踏み込もうとしているのか。

「いいねぇ」

 酒井がそんな言葉を呟く。酒井は武蔵が大改修を受ける前から武蔵に乗っていたのだ。ほぼすべてを知っているだろう。だからこそ、学長という立場も踏まえてそうつぶやく。

「最近色々と周りが動くようになってきたけど……そうやって踏み込むのはいいことだと思うよ」

 相変わらず飄々とした態度で、三河の関所への道を歩きながらそんな事を言う。正純はその意味が解らず首をかしげるが、構わずに酒井は続ける。

「正純君、少し踏み込めてないところがあったからね? これからも知らない事を知ろうとして対等になろうとするのはいいことだよ。ね、副長」

「いや、そこで何で俺に話題をふるんすか」

「いや、だってね?」

「”武蔵”さんいたら絶対ツッコミが入っただろうなあ……」

 そんな事を呟きながらも、正純の質問に俺たちは答えない。

 武蔵には古今東西様々な人間が流れ着く。そのほとんどが”後のない”人たちだ。そして必然的に、彼らには色々と過去がある。語れる過去、語れない過去があり、その内容は実に多種多様だ。そして人の過去を知っている者達には、一つ共通の認識がある。それは、

「ま、こういうのは本人抜きに話すもんじゃないよ」

「本人?」

 酒井の言葉に歩きながらも再び首をかしげる正純に苦笑し、俺が言葉を送る。

「あの馬鹿だよ」

「え?」

「後悔通りって名前はあの馬鹿が後悔してるところから来てんだよ―――これ以上知りたきゃあ俺たちじゃなくて本人に聞け。ちゃかすかもしれないしふざけるかもしれないけど……アイツが後悔を忘れずに、今も約束を守ろうとしてるんなら絶対に嘘はつかねえよ」

「そうか、助かる」

 正純の言葉を受けて空を見上げる。先ほどから遠くに三征西班牙の護衛艦がちらほらと見えていたが、その姿が徐々に大きくなってきている。数は中々に多い。三河に派遣されている人員の交代要員というわけでもないのだろう。

 護衛艦に守られ、中央を行く艦を見て思い出す。

「あれは……」

「栄光丸(レーニョ・ユニート)、教皇総長(パパ・スコウラ)のだね」

「あれがか……」

 三河へと向かう白い艦、栄光丸はK.P.A.Italiaが所有する旧派の象徴とも言える存在だ。ヨルムンガルド級ということで武蔵と比べれば小さいが、その性能は中々に高い……とオタクが言っていた。資料資料とか言いながら笑顔で知識を呟くのはやめてほしい。思わずメガネを叩き割りたくなる。いつになったらメガネが本体ネタをやるのだろうか。

「教皇総長とか嫌なイメージしかないんですけど」

「奇遇だねぇ、俺も嫌な思い出しかないよ」

「仕事がない」

「俺も仕事がないねぇ」

 ここに年と役職を超えた友情が生まれた。

「いや、仕事してくださいよ」

「だって?」

「ねぇ?」

 仕事がないのは仕方ないし、それは学長の方もそーだろ。

 どう足掻いたところで明確なチャンスが存在しなければ武蔵が今の状況から脱することは難しいだろう。そして例えチャンスがあったところで、贔屓目に見ても武蔵は弱い。国力がない。戦争なんかしかけられれば先は暗い。本当に聖連は地味で嫌らしい手段で武蔵を削りに来ている。

「今回は確か……大罪武装の要求でしたっけ?」

「だったかな? 正直俺たちには関係のない話だよね、これ」

「学長なんだからもうちょっと興味もってほしいんすけど……」

「え? だってこんな知識持っててどうするの? 俺、学長だよ? 無駄に知識溜めこんでいるよりも朝の朝礼で生徒集めて昔の自慢話してる方が楽しいよ?」

 こいつ色々と最低だ。

 最初の真剣な空気は何処へ行った。まあ栄光丸が三河へ来ると解っても武蔵への直接的な影響はない。そんな事は心配するだけ無駄。再び空気は武蔵でよく感じられる緩いものへと変わっていた。昔の自分ならまだ緊張感漂う空気を好んでいたかもしれないが、今はこのゆるい空気が好ましい。そこに日常があるって事を何よりも感じさせてくれている。

 なぁ、そうだろ? マリィ。

 好意的な感情が返ってくるのを感じる。どんなに離れていてもつながりあっていることを再認識していると、

 第一の関所に到着する。


                           ◆


「どう思う?」

「どうって……なんです?」

 第一の関所を抜けたあと、武蔵へと戻って行く正純の背中を見る。整備された土の道路を行く姿を見ながら酒井の言葉を拾う。

「君たちに踏み込んできている事だよ」

「まぁ、いいんじゃないすか? 知ることは大事ですし」

 ―――人は己を知ってからこそ真なる道を選ぶべきである。

 その言葉は金言だと思うし、胸に刻んでいる。だが常に知るべきなのは己だけではない。自分を知るだけでは前には進めない。自分の横に立つ者を知り、後ろにいる者を知り、それで初めて前に進めるのだ。だから武蔵の住人が知り、俺たちが知ることを正純が知る事は決して無駄ではない。無駄ではないのだが、

「君もまだ後悔してる?」

「後悔してなきゃ我慢できてませんって」

 何に我慢している、とは言わない。欠けてしまったが”彼女”の魂は再び見つけた。それも予想外の形で。だが色も美しさもあの頃と一切変わっていないから、”彼女”の魂だと断言できる。迷ったあの頃とは違う。

 今度こそ”彼女”を、そしてトーリを守ろう。

 密かに誓っている事だけど、バレているんだろうなぁ……。

「武蔵ってみょーに、秘密にしてる事を見つけることが上手い連中がいません? こう、閉まっていたものを暴かれるっていうか」

 正純が見えなくなったところで関所に背を向けて、三河へと行く為に通らぬばならない林道を目指す。武蔵が停泊している港と三河の間には、それを分けるように山が存在する。その林道は山を下りる為に存在するものだ。

「あー、あるある。俺も黒盤買ってそれ隠したりしてるんだけど、すぐにタマ子や”武蔵”さんにみつけられるんだよねぇ……」

「ちなみにそれ、どこに隠してるんすか」

「布団の下」

「何故わざわざ毎日自動人形がチェックしそうなところに隠すんだこの人は」

「隠す場合の定番なんだけどなぁ……」

「それ、自動人形がいない場合っすよね?」

 酒井の緩い、というよりも力の抜ける感じは何故か懐かしいものがある。多分ノリが”昔”に通じるものがあるからかもしれない。まあ邪魔者扱いされている者同士、暇を一緒に潰すことが多いから、気を張らなくていいのは良い事だ。

 と、そこで、

 林道の中に立つ姿が見える。

 初老の男が二人、そして十代……おそらく十八ほどの少女が一人、林道で何かを待つように立っている。酒井の顔が懐かしいという感情が乗った笑みで歪むのが見えるため、おそらくこの一団が酒井の迎えであり、

 ……松平四天王の二人。

 聖連発行の役職者図鑑で顔を確認したことがある。槍を持った大男が本多・忠勝で、年を感じさせる背の低い方の男が榊原・康政だ。少女の顔は知らないが、一緒にいるという事は護衛だろう。松平四天王に護衛が必要かどうかは怪しいところだが。ただ気になるのはここにはいない井伊・直政の存在だが、任務か何かで離れていると考えるのが妥当か。

「おぉ、久しぶりだなぁ」

 そんな声を漏らしつつ接近する酒井の横を歩きながら林道に入ったところで、

 軽い違和感を感じる。

 何故、あの女武者は柄に手をかけている。護衛という立場からしてすぐに武器を引き抜くためか? 常に戦場にいると心得ているためか? 殺意も殺気も感じないがこの感じは―――戦意だ。

 両袖の中に隠してある符を取り出すのと同時に、

「見せろ」

 女武者の姿が消えた。


                           ◆

*1


「お―――」

 酒井の楽しそうな声が聞こえるのと同時に一瞬で思考を加速させる。思考が加速した世界では相手も、自分も、全ての動きが緩やかになる。何もかもが緩やかな動きとなって見えてくる。その加速された思考の世界で見るのは、

 女武者が術式を展開し、一瞬の加速で背後へ回り込んだ姿だ。まっすぐ酒井を狙っている事を考えるとこれは―――あらかじめ仕込まれていたことだ。殺意を持って相対するのであれば酒井の前に俺を落とすはずだ。それに本多・忠勝も榊原・康正も一歩も動いていない。それに”見せろ”の言葉が意味すること、それは、

 ―――上等。

 久しぶりに魂に火がついた感じがする。これはおそらくアレだ、忠勝がこの女武者の成長を知りたがっているのだろう。俺という存在は今朝になって勝手に酒井につれてこられたようなものだから考慮に入ってないだろうが、

「武蔵の副長を無視するとは中々いい精神してるよ」

 酒井の声、それは此方に迎撃を完全に一任する意味の言葉だ。故に迷わず、

「急々如律令―――雷鳥」

 覚えている陰陽術の中で最速の術を酒井の背後へと向けて放つ。雷鳥、つまりは雷の術式。使う人間の腕前次第だが、放ってからは雷の速度―――雷速となって標的に襲いかかる。空気を焦がしながら女武者を貫こうとする雷はしかし、

 当たることなく回避される。

 見えた。

 寸前で体を加速させ酒井の横へと抜けるように動き出している。雷よりも一歩早く動き出す事で攻撃の回避に成功している。これは相手の速度は雷に勝っているとみるべきかどうか、その判断はまだつかないが―――取りあえず迎撃する。

 女武者の動きは酒井の横を抜ける様な動きだ。その狙いは酒井と此方の間に入るのではなく、酒井を盾にする様に動くことで此方の直線的な動きを封じる事だ。そして手に握られた得物は―――刀だ。ブランドまでは把握できないがよく研がれた得物だ。だがそれを使うには”距離”が必要だ。女武者の意識を向ける先が酒井ではなく、此方へと変化しつつあるのを動きで理解する。

 だから接近する。

「おぉ?」

 誰の声かは解らない。が、それを気にせずに体勢を低く、それこそ地を這う蛇の様に低い体勢で、駆ける。地を這う動きは素早く、捉えにくい。

 女武者が対応する。

 それは、加速だ。

 地を這う蛇の様な動きに対して加速することを回答と女武者はする。加速し、いつでも刀を振れるように体を捻じりつつ正面から飛び込んでくる。下策にも見える正面からの相対はその実、有効な攻撃に繋げる為の一手だ。

 つまり加速による踏みつけ。

 這うということは相手の攻撃の選択肢を狭める。そして迎え撃つ側が一番隙を晒さない攻撃手段が踏む事。加速し、踏み抜き、通り抜ける。一番楽で早い方法。だからこそ、

 甘い……!

 前方へと向けて更に加速するように大地を蹴りぬく。右手には符を二枚、左手は自由にし、此方の行動の変化に迷わず刃を突き出してきた女武者に対して、

 符を突き出す。

 刃と”紙”で出来た符が接触し、金属のぶつかり合う音が発生する。その事に驚きが生まれない辺り教育が施されていると思うが、見ていてこの女は解る。あまりにも”綺麗すぎる”のだ。まぁ、それも仕方ないと言えば仕方ない。おそらく実戦経験がないのだろう。戦場を知らぬ者特有の癖がチラホラ動きに見える。

 だから、

 軽い動きと共に術を割って武者を飛ばした。


                           ◆


 術が壊され、高く飛んだ武者の姿を追いかける。

 ……どうすっかなぁ。

 活動は使える。形成はマリィが居ないが、自前の魂でもいける。もちろん創造もいける。だが聖連の監視がある中でそんなものを使えるわけがない。だからこそこうやって苦手なものを使いつつ、体術混ぜて騙しているが―――

 女武者が術の暴発から復帰し、回転しながら着地する。既に構えている所を見ると戦意は死んでいないようだ。戦闘の終了条件が見えない。一瞬で加速に入る武者の姿を片目で追い、もう片目で酒井を追う。

 何時の間にか忠勝たちの横に移動していた。抜け目ない。

 あ、何かハンドサインしてる。

 酒井のハンドサインは解る。なるほど、その手段があったか、と、一瞬で思考し、

「急々如律令、奉導誓願可―――不成就也ァ、炎獣ッ」

 慣れない陰陽術で炎の獣を生み出し、それに女武者を襲わせる。それを最短、最速、最小限の動きで回避した女武者が一気に接近し、理想的な距離を保ちつつ―――武器を振るう。刀という武器は振るうために一定の距離が必要であり、刃を引くのにも距離が必要。だから間合いの取り方こそが最重要だ。

 だからこそ、飛び込む。

 よく自分が行う攻撃手段だからこそ、この行動で確実に相手の攻撃を封じることができると―――信じられる。

 だが相手も馬鹿ではない。それぐらい予想している。女武者が此方の動きに合わせて後ろへ下がる。術式の加護もあって素早い動きだが、

「ッ」

 背後には炎獣が待ち構えていた。そのせいもあり女武者が減速した一瞬に―――

「むにょり」

「っひ」

 両手で女武者の胸を掴む。

「酒井式攻略術……!」

「っひ、っひ、きゃあああああああああぁ―――!?」

「お前、生徒になに教えてんだよ」

「いや、基本だろ、アレ」

「将来有望ですなぁ……」

 乙女らしい悲鳴が三河に響く。


                           ◆


「……」

「ま、マリィ……ちゃん?」

「……」

「握っている箒が折れていますよー? ま、マリィちゃーん?」

「アキ……」

「はい?」

「フリンは……いけないんだよ……?」

「っひぃ!?」

 その頃、武蔵の某神社では瞳の色を無くした金髪巨乳が目撃された。
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| 断頭の剣鬼 | 10:55 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

モゲロ! モガれてしまえ!妖怪殿ォォォォォォォ!

そして目から消えるハイライト。女神様が覚醒したんですね。

| 名状し難きナニカ | 2012/08/25 11:42 | URL |

マリィ様が見ている

今回のサブタイトルをつけるとしたらこう・・・か

| 水無月 | 2012/08/25 12:09 | URL |

更新お疲れ様です。
外で門もいいですが私としては、本筋を非常に楽しみにしております。水銀中毒が最近ひどくなってきたのでこの哀れなジャンキーになんぞグランギニョルをみせてください。

| 鴉 | 2012/08/25 13:13 | URL | ≫ EDIT

瞳の輝きが消え去った女神の嫉妬の籠もった発言。
だがそれもイイ!!(オイ

アスアス、咎は甘んじて受けような( ´艸`)ニヤニヤリ

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/25 16:55 | URL | ≫ EDIT

妖怪閣下何してるんですか……!!

……マリィ病むフラグ……?

| 蒼桜 | 2012/08/26 11:18 | URL |















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