陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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IF外伝 境ホラ2

「これが俺の幕引きの一撃だっ!」

 全力でハリセンをフルスイングする。そこに一切の遠慮は存在しない。文字通り全力、全身全霊の一撃だ。振るのと同時に耳を刺激する高い音と衝撃波が発生し、ハリセンの先にいた存在が、

「うひょお―――!」

 飛ぶ。それは人間だ。いや、人の形をした何かだ。いや、全裸だ。そう、全裸だ。全裸がケツにハリセンを受けて空を飛んでいる。ものすごいスピードで空を飛んでいる。そりゃあもう凄い勢いで空を飛んでいる。何やら楽しそうに奇声を上げながら飛んでいる。そろそろアレは規制されるべきだと思う。ともあれ、ハリセンで吹き飛ばした空飛ぶアレは全裸で、非常に不本意ながら身内に入る人間だ。まさか自分が香純の様にツッコミの側の人間になるとは思いもしなかった。

 ほんと、こうやって全裸のケツにハリセンを叩き込む様な日々が来るとは思わなかったなぁ……。

 奥多摩にある武蔵アリアダスト教導院の校舎の窓から空を行く葵・トーリの姿を見ていると、

「ナイスショットアキちゃん!」


 金髪の黒魔女がサムズアップを送ってくるが、

「いや、駄目だ。アイツなんか慣れやがった」

 窓から見える全裸は空を飛びながら様々なポーズを決めている。そのポーズが中々様になっているのがムカつく。何年も続けていれば流石に慣れるかぁ……などと感想を抱いていると、不意に名案が浮かんだ。

「あ、そうだ。浅間アレ追撃しようぜ」

「え? 私巫女ですよ? 人に射撃しちゃ駄目ですよ……え、なんですかその疑いの視線は! 失礼ですよ! 私巫女ですよ? えぇ、ですが私ぐらいですよね、トーリ君を狙撃できるのは私ぐらいですもんね。それはもう撃たなきゃ駄目ですよね。本当はいけないんですよ? でも身内でのツッコミですし問題ありませんよね。えへへ」

 浅間・智の所有する弓、梅椿は戦艦を打ち抜く程の力を持っている。それを迷うことなく展開し、矢を射出する浅間の姿はどこからどう見ても嬉しそうで、

「合いましたぁ!」

 空でアクロバティックなポーズを決めるトーリに追撃の矢が命中した。


                           ◆


 一日の授業が終了し軽く体を解す。体を伸ばし、そして数時間前に全裸が飛び出したため破砕された窓ガラスの方を見る。ステルス航行中のため空は青ではなく白に染まっている。好きな時に青空が見れないと言うのは中々精神的に抑圧されるものがあるが、武蔵の住人に限ってはそういう気遣いは必要ない。長い事武蔵に乗っているため流される流浪の生活に慣れているというのもあるが、一番の理由はその気質だ。武蔵の住人達は常日頃からお祭り騒ぎを起こし、暴れ、笑い、楽しんでいる。つまりはアッパーで、空の色程度は気にならないのだ。というように住人の精神には何の影響もないステルス航行だが、武蔵を守るためには必要である。武蔵という場所は極東に与えられた最後の領地で重要な存在だ。もっとも、アッパーな住人どもはその事実を重く見る事はないが―――たとえ、武蔵が最後の行き場だとしても。

 流れ着いてから約十二年が経過した。瀕死の俺と困っていたマルグリットが、葵・善鬼に青雷亭(ブルーサンダー)の前で拾われてから十二年。本当に色々とあった。予想以上に濃い生活で驚きの連続だった。まさかこうやってまた馬鹿ばかりしている日々がやってくるとは夢にも思わなかった。

 こればかりはトーリ、喜美、そして―――ホライゾンに感謝すべきなのだろう。

 瀕死だった俺とマルグリットはこの世界に存在する住人ではなかったため、元の居場所を逆探知する術式も親探しも無理だった。咄嗟に言ってしまった嘘でメルクリウスも指名手配犯になってしまった。その容疑は虐待と育児放棄。いわれもない罪をかぶせることに罪悪感は全くないので、武蔵へ一度でもいいから足を運んで番屋に突き出されて欲しいと願うのはこの国のスタンダードに汚染されているからだろうか。

 ともあれ、俺たちには保護者が必要で、葵・善鬼が快くその役目を引き受けてくれた。住む場所を、生きるための食べ物を与えてくれた。そして生活を支え家族として迎えてくれた葵家には、本当に感謝している。世界と向き合うために入学すると言った時も二人分の学費を出してもらい今でも頭が上がらない。そのお金はただ受け取るわけにはいかなかったので、今でも学費分を返すために必死にアルバイトをしている。

 小等部、中等部、高等部と、予想通り退屈する事のない、満たされた日々だったと思う。全裸が全裸になったり女装したり、それをハリセンで殴り飛ばしたり、非モテ共がエロゲ遊んでいる横でマルグリットとイチャついたりと。失ってしまった故の足りなさと後悔を心の奥で感じながらも、後悔をしながらも着実に充実した日々を送っている。

「アキ」

「ん」

 声に思考を乱され目の前にいる存在に気づかされる。マルグリットだ。極東の、武蔵アリアダスト教導院の改造していない、そのままの制服姿で目の前にいる。かくいう自分も制服姿だ。アインクラッドから持ち込めたのはあの時、最後に使っていた装備で、そのほとんどは修復不可能なまでに痛んでいる。篭手と具足は格納空間に仕舞い、赤い衣に関しては手遅れだったので制服の材料となっている。おかげで完全な改造制服、フードが付き普通のよりも少々裾が長めの出来となっている。

 それでもノリキやトーリほど改造されてないのでまだまだマシな部類だと思う。

 ……本当、改造してる人間はとことん改造するからなぁ……。

 外国の教導院では一年中海パン姿の変態がいるとか。頭がおかしいんじゃないのかな。

「私はトモの所に行くね」

 席から立ち上がり、再び体を軽く伸ばす。前の世界の中学高校とそこそこの不良でとおってきた人間としては狭い教室に押し込められるのは中々に苦痛なのだが、常識を超えたフリーダムさにそこらへんの窮屈さは感じない。司狼も多分アリアダスト教導院だったら授業受けるんじゃないのだろうか。

 視線を教室の入り口の方にいる浅間へと向け、

「マリィの事よろしく。いつも通り」

「あ、はい。時間通りに迎えですね。マリィが来るとウチの神様も喜びますし、助かっていますよ」

「じゃあアキ、またあとでね」

 生活的な余裕は―――一応ある。善鬼の資金的援助があるおかげだ。昔はリアル侍でその経歴から何かお金があるらしいが、それでも負担をけたくないのは世話になった人間としての心理だ。日々を生きるための金を共働きで稼いでいる。マリィと浅間が教室を出て浅間神社へと向かうのを見届けながら此方も行動を開始する事とする。

「お、明広殿」

 忍者に呼び止められる。金髪巨乳好きの同志だ。

「明広殿はどうするので御座るか? 期限が近いで御座るよ」

 ……此方の意思を確認しに来たか。まぁそりゃあ気になるよな。

「連合で決まってんのは全裸にウッキー、ネイト、点蔵と直政だったっか」

「Jud.」

 Jud.つまりそれは極東の、罪人の為の言葉だ。極東は言葉さえ自由に選ばせてもらえない、か。

「まあ、……俺もそろそろ腹ぁ括るべきなんだろうなぁ……」

「そうで御座ったか。いや、催促するようですまなかったで御座る」

「いや、気にしないからウーロン一分な」

 四十秒で帰ってきた。極東の自動販売機は基本的にターレス式だ。中身が出てくるのに最低でも二十二秒はかかるのにこの異常なパシリスピードはどこから……あぁ、俺たちが一からパシリにしたんだっけ。なら問題ないな。

 点蔵に買わせたウーロン茶に対して金を渡し、それを口にする。飲み終わったところで缶の代わりとなっている竹筒を教室の隅のゴミ箱へ投げ捨てて、部屋を出る準備をしていた直政に言葉を投げる。

「悪い直政、俺ちょっと遅れるわ」

「聞いてりゃあ解るさね」

 ひらひらと手を振り直政が教室を抜ける。機関部で働く彼女は既に来年の総長連合第六特務―――武蔵機関部の担当となっている。その練習と言うか、実働に慣れるために機関部に関してのほぼ全権がすでに直政に預けられている。つまり機関部でバイトしているのなら彼女に話を通さなければいけない。

「んじゃ、俺も行くか」

「幸運を祈っているでござるよ」

「お前に言われると呪われそう」

「自分の扱い酷いで御座るなぁ!」

 点蔵が不憫ポジションなのは今更な事だ。もはやそれは語るべくもない。

 なにはともあれ、

 決めたのなら進むしかない。特に荷物がない事を認識しつつ指の動きで鳥居型のホロウィンドウ―――表示枠を出現させる。そこからとある人物の連絡先を引っ張り出し、表示枠に短いメッセージを撃ち込んでそれをその人物のもとへと送信する。その人物からの返事を待つまでもなく、片手でまだ教室へ残るクラスメイト達へ別れのサインを送りながら退室する。

 木の床の廊下は歩くたびに足音が反響する。授業が終わり、教導院での一日が終わる。廊下を歩く学生たちが寮や仕事先へ向かおうと廊下を歩く姿が多くみられる。もう少し待ってから歩き始めた方が廊下の渋滞を避けられたかも知れない。賑やかなのも好きだが、賑やかすぎるのも問題だ。

 まぁ、そこらへんは慣れなんだけどなぁ。

 日ごろからアッパーなテンションと付き合っているとたまに自分の本来のテンションを忘れそうになって怖い。いや、多分もう忘れている。溶けない宝石がそのままであるのが唯一の救いだ。あぁ、マルグリットまでナルゼやマルゴットの様に触手モノやBL本を書きだしたら正直死ねる。頼むからそんな未知を俺に見せないでほしい。

 武蔵アリアダスト教導院はその校舎が小さいという性質上、縦に少々長く、そして校舎と校舎をつなぐ渡り廊下が多くなっている。その一つを渡りながら見る外の景色、緑色の木々が若々しい。開いた窓から暖かい空気が流れ込んで、校舎全体が春を感じられるようになっている。この季節に授業中眠くなってくるのはまあ、仕方がない話なのだが、

 寝たらなぁ……。

 何をされるかわかったもんじゃない。魔女は確実に異次元電波でネームを切るし。厨二メガネは一人の世界突っ走るし。そう言えば創作関係の連中のインスピレーションはどっか壊れてると思うのが正直な感想だ。もっとマルグリットの様なまともな人類はいないのだろうか。

 くだらない事を考えながら歩いていると目的の場所に到着する。扉の上に出ている表示をチェックし、目的地だと再確認してから扉を開ける。

「ちーっす」

「ん? 来たわね」

 職員室だ。


                           ◆


 何度来ても職員室という場所に慣れる事はない。基本的に怒られるときか悪戯をする時以外に来ないからだ。というか前者が九割方だと思う。

 担任のオリオトライ・真喜子の前に立つ。

「それじゃあ―――総長連合副長の座に立候補するのね?」

 オリオトライが確認してくる。その前に浮かんでいるのは一枚の表示枠で、総長連合関係の情報が載っているのだろう。総長連合、武蔵の実働を担当するのは基本的に武闘派の連中で、選挙などを通して役職が決まったりするのだが、来年の役職者達の選挙は既に始まっており、一部終了している。総長、第一、第二、第五と第六特務が、上からトーリ、点蔵、ウルキアガ、ネイト、直政で既に決定している。第三と第四にはナルゼとマルガが立候補していて―――確実に当選するだろう。少し暗い話だが、暫定議会がどこか”押して”いるという話だ。でなければ総長連合が同じクラスから集まるなんてことはないだろう。

 たぶん、生徒会も同じような形になるかもしれない。

「Jud.まぁ、やっぱりここは俺以外に相応しいやつがいないし? 超頼られている感じなんで副長として小物達に威厳を示すのもアリかなぁ、と思って」

「それ皆の前で言ったら確実に殴られるわよ? ま、先生は覚悟決めたってんなら何も言わないわよ、っと」

 表示枠を覗き込み、その中を確認しながらオリオトライが言葉を続ける。

「……うん、今のところ立候補は一人もいないわねー。やっぱり副長職は名誉だけど、誰もこんな教導院でやりたがらないのよねー」

 総長連合とは実働職。その教導院における武の象徴であり、副長はその中でも総長に次ぐ実力の持ち主で、場合によっては総長を凌ぎ教導院最強の存在だ。だが非武装、武装解除が基本の極東において副長という存在は邪魔で、総長同様飾りに過ぎない。

 ……辛かっただろうなぁ。

 代々”無能”が総長兼生徒会長として選ばれる武蔵だが、副長は武蔵における最強の存在でなければならない。だが武蔵に武は必要とされない。裁判や機関部、騎士階級や隠密などが存在するのは、それが武蔵の維持に必要な存在であるためだ。そして他の特務職が必要とされる中で純粋に武”だけ”の副長はあまりにも意味がない。

 武の象徴とされ、学生間の抗争の最前線で立つべき人材が戦場に立つことを許されずに、ただ平和な日々に腐るのは辛かっただろうなぁ……。

 だけど、

「まあ、約束ですし」

 それは昔、一人の少年がした約束だ。

 皆が願いを叶えることのできる国をつくる。そう約束した少年がいた。時間が経ってその言葉は忘れられていたように思えたが、そんな事はなかった。末世が見えてきた中で、約束を果たそうと時を見計らい、そして総長兼生徒会長として就任しようとしている。約束を無能ながらも果たそうとしている。それを手伝おうとクラスの皆も動き出しているのだ。

 俺も遅れるわけにはいかないだろう。

「ま、先生はそういった事情は知らないけど、楽しそうにやれるのなら間違いじゃないんじゃない? 役職者にはお給金出るみたいだし、少し生活安定するかもね?」

 心の中でグッとガッツポーズを決める。よし、今夜は久しぶりに魚じゃなくて肉にしよう。シロジロの所だと確実にボったくられるから別の所で買い物しよう。そうだ、今夜はマリィと肉祭……!

「他に立候補する人間がいなきゃ自動で副長になれるから、決まったら先生の方から連絡するわ。まあ、九割九分他に立候補する物好きはいないだろうけどね。副長だけはここ数年ずっと空席だったし」

「副長が本当に名誉なのかどうか疑いたくなる惨状ですよねー」

 副長に立候補し、これで自分もスタートラインに立つのを実感する。これで当選すれば晴れて総長連合の一員だ。そして、

 真にスタートするのは―――来年からだ。
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| 断頭の剣鬼 | 11:18 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

更新お疲れ様です。

初っ端から吹いたww
ツッコミで云うセリフがそれですかwww

後、マリィ様は汚染されなった件w

| tk | 2012/08/23 12:08 | URL |

あのメンツの中で12年暮らして汚染されてないマリィすげぇ……! そしてサイアスはやっぱり汚染されていましたとさ(笑) いやさりげなく汚染されてるマリィも見てみたいですが。BL本を真っ赤になりながらガン読してるとことか(おい)

| アルフィード | 2012/08/23 12:33 | URL |

汚染w
そしてどんな環境だろうと色あせないマリィさんマジ女神(*≧∀≦)
水銀、を引用するのはしゃくだけど、流石、花よ宝石よと言祝がれるだけありますなぁ。
んで、個人的にはコンシューマ版でロリマリィの笑みに幕引き並みの一撃を貰った自分ですが、それだけにちょっとざんねn――いや、金髪●乳信仰は欠片も揺らぎませんけど(笑)

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/23 18:29 | URL | ≫ EDIT















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