陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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IF外伝 境ホラ1

 奇跡を疑え。

 都合のいい展開なんてありえない。そんなご都合主義を信じてはいけない。仮にあったとしても、それは絶対何らかの要因が存在し、そういう風に仕向けられたことだと理解しなくてはいけない。純粋に全ての結果は今までの努力と、そして行動によって積み重ねられてきたものだと考えなくてはならない。

 神様に祈ってはいけない。

 神を頼ってはいけない。

 神を信じてはいけない。


 ……ぁ……。

 ゆっくりとだが、意識が覚醒する。全身に熱があるのを感じられる。熱い。痛みから生まれる熱だ。全身をむしばむその熱は―――まだ生きている事を示している。生きている。いや生き残ってしまったと言うべきか。あの時確かに死ぬ覚悟があった。なのに生き残ってしまった。

 俺の中にマルグリットは―――マリィはもういないのに。

 瞳を閉じたまま、涙を流す。もう、マルグリットはいない。二度も愛を失った。

 もうこの世に未練はないからこのまま安らかに―――

「―――泣かないで」

「―――……ぁ」

 涙が、誰かに拭われるのを感じる。暖かい声、暖かい手、暖かい存在。それが一瞬で誰だか理解する。心の中に安堵が生まれる。良かった。まだ失われていなかった。その事実だけで救われた気がする。自分の自殺に付き合わせてしまったのに、生き残っててくれてありがとう。

 目を開き、視界に入ってくるのは木造の家の天井だ。見慣れない天井だ。すくなくとも自分の家でも病院のものでもない。だとしたらここはどこだろうか、その疑問がある。だがそれよりもまずはマルグリットだ。

 今すぐマリィを抱きしめたい。

 そんな衝動が湧き上がる。生きているこの喜びを分かち合いたい。そう思うが体が上手く動かない。首も動かない。このまま強引に動かそうとすると、

「……っく」

「無理しないで」

「……の……ど、も」

 声帯までやられている。どうやら創造の影響は体外だけではなく体内にも現われていたようだ。それにしても、ここが現実世界だと仮定すると―――いや、待て。現実の世界にマルグリット・ブルイユは存在しない。存在できないはずだ。だからここが現実だという事はありえない。まだ電子の世界を彷徨っている? 脳に疑問が浮かび上がり答えを出そうとするが、体が動かせないから判断材料を集められない。ただ自分の体の中でエイヴィヒカイトが、永劫破壊の法則まだ生き、そして根付いているのが解る。人間を魔人へと変貌させる超人の法則は今も体を再生しようとしている。今日は無理だが明日か、または明後日には再び体を動かせるようになっているだろう。

「アキ」

 傷ついた体が暖かいものに包まれる。誰かが体に触れてくれている。そちらの方に顔を向けたいのに体を動かせないのが残念だ。

「私、言わなきゃいけない事があるの」

 何を?

「見て驚かないでね」

 そう言うとマルグリットの気配が動くのを感じられる。横に、同じベッドシーツの下にいた存在者がゆっくりと覆いかぶさるように上に移動し現れたのは―――少女だった。それも見た目五歳六歳ほどの、小さな少女だった。金髪の伸び放題の髪に、少し困ったようだけれどはにかむ様な笑顔、マルグリットをそのまま小さくすればこのような感じになるだろう。

「………………………………………………………………………………………………ぇ」

 目の前の現実に一旦フリーズしそうになるが、

「アキも……」

 マルグリットがいつの間にか手にしていた手鏡を此方に向けてくる。デザイン的に古臭さを感じる手鏡だが、それに映された自分の姿は―――幼い。マルグリットと同じような年齢の姿だ。懐かしい。このころはまだ司狼とはちゃめちゃな事はしていなかった。小学校後半と中学に入ってからヒャッハーしだしたのでこの頃はまだまだピュアボーイだったはずだ。いやぁ懐かしい。

「アキ、現実逃避してる?」

 うん少しだけ。

 声帯を酷くやられてしまっているので言葉が上手く出ないため、心のつながりを通してマルグリットに言葉を送る。なぜこんな風に縮んだかは―――まぁ、ある程度の予想は出来る。ここが電子世界だと仮定すれば、

 データの消失に伴う縮小化が考えられる。

 あの時、あの創造で、体の七割を消滅させてしまっている。完全な消去、消滅だ。痛覚や感覚さえ最終的には感じられなかった。体を構成するポリゴンがほとんど消えていた特にキリトの攻撃食らったため、最後はもうほとんど残ってなかった気がする。そこから残ったものをかき集め、再びピースをくっつけたとなると、やはり足りない部分が出てくるわけで―――こんな風になってしまうのだろう。

 というのが現実逃避しつつ考えた案だ。

 視線を動かし、改めて状況を確認する。めくれ上がったベッドシーツから見える体には包帯が巻かれ、お札の様なものが張られている。そして包帯は体から流れ出る血によって赤く染まっている。そう、血だ。知っている限り、どのVRMMOにも流血描写は存在していない。あの戦いで確かに流血をしていたが、アレは創造に伴う一つの副作用としての効果だ。だから創造発動中に流血するのは自然だが―――今、流血しているのはおかしい。

 あぁ、そうだ。マリィ。

「ん?」

 ここは、電子世界なのか?

 マルグリットにそう尋ねる。マルグリットなら感覚的に理解できるはずだと、そう確信して尋ねるが、

「うーん、多分、違う? 初めての感覚でちょっと解らない」

 多分違う、か。

「でもね」

 マルグリットがそっと体を倒して、覆いかぶさる様に抱きついてくる。そのぬくもりを感じられるだけで良かった。生きていて本当に良かったと感じられる。もし起きて、そこにマルグリットがいなければ、俺は廃人と化していたかもしれない。二度も惚れた相手を失うなんて、とてもだが耐えきれる自信はない。

 此方の体の具合を考慮してそっと抱きしめてくれるマルグリットの抱擁を感じていると、

 部屋の扉が開いた。


                           ◆


 扉が開いて見えたのは、なんというか少し近未来的な服装の女性だった。自分が知っているような服ではなく、体にぴったりとはりつくような、布のボディスーツを着ていた。色は白をベースに青。頭には髪を纏めるためかバンダナの様なものを着けており、顔には少しシワが見えるけどまだまだ溢れるバイタリティを見せる女性だった。扉を開けて入ってくる彼女は、

「――――――?」

 此方には理解できない言語で語りかけてきた。

「……ぁ」

 おそらく、今の自分たちを保護してくれた人物なのだろう。何かしら言うべきなのだろうが声が出ない。声帯は傷ついたままで声が出ない。再生にはまだもう少し時間がかかりそうだ。ここはどうすべきか迷ってたところで、

「私が話すね」

 覆いかぶさってたマルグリットが体を持ち上げ、ベッドの端へ移動する。体が小さく子供に見えるからその動きが可愛らしい……っと違う。

 七十五層でやらかしてくれたことを考えると果てしなく不安だ。

 頑張れマリィ……! まずはコミュニケーションを成立させるところからだ……!

「え、えーと」

 マルグリットが女へと向かい、少しだけ口ごもる。よく考えればマルグリットは俺以外の人間と話したことのない引きこもり少女だったのだ。あの啖呵は勢いと場の雰囲気によるものだろう。現に今は凄い勢いで動いている手が、困っている事を表している。そして、

「お、おはようございましゅ!」

 か、噛んだ!

 開幕から不安になってきた。これ、本当に任せていいのだろうか。多少無理してでも俺が出るべきじゃないだろうか。

「あ、アキは待ってて、私だって守られてるばかりじゃないよ」

 それはそうだが、見ているこっちが果てしなく心配になる姿なのだ、今は。

「―――――――――? ―――。――――――」

 言葉が理解できないが、何やら此方へと向かって女が質問してきているのが解る。マルグリットも必死に会話を成立させようと身振り手振り、何とか言葉を伝えようとして困っているから、

「マ……ぁ、リ、ィ」

「アキ?」

 名前を呼んで注意を引き、

「な、ま、え、だ」

 一文字一文字ゆっくり、区切るように時間をかけてマルグリットに言葉を伝える。意味を理解したマルグリットが落ち着き、ゆっくりと深呼吸してから、自分を指さし、

「マルグリット・ブルイユ」

 そして今度は俺を指さし、

「最上明広」

 あ、何か慌てだした。


                           ◆


 名前を聞いた女のリアクションは劇的だった。目の前にホロウィンドウの様なものを何枚か浮かべると、それを操作し始める。それを見てやはり電子空間ではないのかと考えるが、違う。女のリアクションが明らかに人間的過ぎる。AIとして表現できる感情やリアクションの範疇を超えている。

 何より言語が共通でないとかナンセンスすぎる。

 と、そこで、一枚のホロウィンドウがマルグリットの前に現れる。女がそれを押す様に手の動きで促してくる。マルグリットが迷わずにそれを押すと、

「聞こえるかい? 言葉、通じるかい?」

 女の言葉が理解できるようになった。

「契約も加護もなしの子なんて初めて見たよ……まさか翻訳術式までないとはね」

 なにやら今、難しい事を言っている気がするが、質問しようにも声が出ない。マルグリットと共に大人しく向こうが話しかけてくるのを待つこととする。ベッドシーツの下で、手を握られる。それが心強い。

「真喜子ちゃん浅間神社に確認取れた? やっぱり聖譜にもそんな名前の武将はいなかったんだね? という事は純粋にあやかっただけかな。うん、ありがとう。国際問題にならないですんだわ」

 何やら名前関係で国際問題になりかけたらしい。良く意味が解らない。確かに最上っていう名前はどっかの武将を思い出させるが特別珍しいってわけでもないし、マルグリット・ブルイユはまぁ、マイナーな名前だ。それが国際問題になるというのは……。

「あぁ、放っておいてごめんね?」

 鳥居のマークがついたホロウィンドウを一旦消した女が此方へと向き直る。

「私はヨシキ。善人の善に鬼神フルボッコの鬼で善鬼」

 マテ、その説明の仕方は何かがおかしい。前半オーケー。後半は明らかに何かがおかしかったぞ。

 だがそんな心の葛藤も知らずに女は言葉を続ける。

「君たち二人がウチの前で倒れてるのを見つけたんだけど……なんだかワケありっぽいし病院に連れて行く前にちょっと事情聞きたいけどいいかね? 場合によっちゃあ連れてく場所変わるし。あぁ、安心して、別に番屋にソッコーで突き出すってわけじゃないから」

 どうやら理解ある人物の様だ。運の巡りがいい事に感謝すべきなのか、この展開に裏があるかとを疑うべきなのか。その判断はつかないが、マルグリットがどうするべきか、それを問う視線を送ってくる。

 全部は話せない。

「うん」

 アインクラッドとか、エイヴィヒカイトとか、そこら辺を説明することはできない。説明しても信じられない可能性が高い。今の状況が良く把握できていないのに刺激的な話題を出したくはない。だからここはそうだ。

 全部―――

「カリオストロが悪いんです……」

 必殺責任のなすりつけ。

「カリオストロ? それは……」

 保護者! マリィの保護者!

「カリオストロは……私たちの保護者みたいな人物なんです」

 基本的に超スパルタで周りの人間の運命を弄るのが大好きな変態でストーカー。

「それで、人の人生を悪戯に、刺激するのが好きな人で、ストーカー? なんです」

「……へぇ」

 普通に言えばふざけた感じにしか聞こえないだろうが、此処にはぼろぼろの俺と、そして純粋無垢な少女が決定的な証拠として存在する。つまり、

「ちょっと待ってな? カリオストロさんだっけ?」

 再び鳥居マークのホロウィンドウが出現する。素早く何枚も生み出しながら、各所に連絡を飛ばしている。

「うん。ちょっと品川のヤクザにカリオストロってやつがいないか見てきてくれない? あ、非協力的だったら? 潰せばいいんじゃない。うん。手段は任せる。あ、そっちは奥多摩で、浅草も―――」

 品川、奥多摩、浅草?

 どれもこれも聞いたことのある場所、と言うか日本の地名だ。なのにこんな服装も技術も見た事がない。本格的に色々と情報を整理して頭の中を整えたくなってきたところで、

 部屋の扉が勢いよく開け放たれる。

「かーちゃんかーちゃん! ついに子供攫ったってマジ!? 元リアル侍が拉致とかヤバくね!?」

 部屋に入ってきた少年が次の瞬間には横に殴り飛ばされていた。ギャグの様な展開に驚いていると、少年が吹き飛んでいった方向から誰かが現れるのが見える。二人の少女だ。

「馬鹿ね愚弟。母さん侍なんだから拉致じゃなくて―――これは戦利品なのよ」

「それも多分違うんじゃないかしら」

 何やらいきなり現れた少年少女たちは非常にいい空気を吸っているようで、初対面だと言うのにかなり気楽にやっている。子供のバイタリティはすごいな、等と思っていると、吹き飛んだ少年が立ち上がりながら、手を挙げてくる。

「よ、俺葵・トーリ、よろしくな戦利品!」

 また少年が吹き飛んだ。




前半シリアスだけど後半になるにつれてカワカミン汚染開始だね? たぶん。
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| 断頭の剣鬼 | 11:07 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

はい、水銀さんに指名手配が入りました~~~www

さてさて、続きを楽しみにしていますよ~!

| 尚識 | 2012/08/22 11:36 | URL | ≫ EDIT

これも全て水銀って奴の仕業なんだ。
全く間違っていないハズ。

これは再びあの妙に出来の良い手配書を見ることができるのか。

| 若年法師 | 2012/08/22 14:14 | URL |

更新お疲れ様です。

水銀さんの説明、問題なくあってるw

次話以降の、サイアスたちのカワカミン汚染具合が楽しみですw

| tk | 2012/08/22 14:25 | URL |

なんかアレだよね。
カワカミンの塊な彼らだと、いつかニートを発見しそう。

| 羽屯十一 | 2012/08/22 18:37 | URL |















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