陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

楽園 ―――ノー・モア・ライズ

推奨BGM: AHIH_ASHR_AHIH


 胸に浮かぶ感想は一つ。

 ―――あぁ、やっぱりこうなるよな。ごめん……寒い。寒いよ、トウカ。

 自身の体温が感じられない。息をしているのかも解らない。ただ負けたって事だけは理解できる。どうしようもない。最初から解りきっていたことだ。断頭の剣鬼。今まで何百もの首を切り落としてきたんだ。たくさん殺したからって自分が死ぬことがないわけじゃないし、

 何よりも―――俺は生きる事を放棄していたんだ。


 戦いに身を任せて……笑って、楽しんで、でも、生きようとはしていない。ただ目的を果たそうと、それしか見えない。それを生きているとは言えない。俺は死んでないだけだったんだ。生きているってのは違うんだ。全部受け入れて、認めて、取り込んで、それでいて目的を持つんだ。復讐だとか憎いからとかそんなくだらない拘りじゃなくて、もっと明日の為に、明日の為の一歩を……そうやって踏み出せる人間を真に生きているというのだ。

 解らなくなった。

 俺は何のために生きているんだ。何で戦っているんだ。何でこんなにも必死になっているんだ。馬鹿馬鹿しい。必死に戦って傷ついていっぱい殺して首を刎ねたりして……本当に馬鹿馬鹿しい。何で俺がこんなにも苦しまなきゃいけないんだ。本来の俺はもっと違うキャラだろうに。少数で馬鹿やって、その光景を続けられるようにもっと馬鹿やって、でもそれが平和であること願って、なあなあで生きていくようなやつじゃなかったはずだろ? 本当にくだらない。

 だから、ここで死ぬのは当たり前だ。解っていた事じゃないか。

 生きる意志もなく死ぬ意志もなければ必然的に誰かに幕を下ろされる以外に終わる事が出来ないんだ。だから、そう、ここが俺のゴールだ。ここで俺の人生は終わりだ。あぁ、何て酷い人生だったんだろう。だけどもう十分に頑張ったし、意味わかんねえし、もういいだろう? 俺頑張ったよなトウカ―――

『アキ!』

 あぁ、悪いなマルグリット。俺の自殺に付き合わせちゃって。

『諦めないで!』

 もう、駄目なんだマルグリット。体が動かないんだ。

 見える。酷くゆっくりに見えるが、ヒースクリフが―――茅場晶彦が確実に殺すために死んでいる此方にトドメを刺しに来るのが。本当にご苦労な事だ。そんな事しなくても今から俺は死ぬのに。

『アキ、お願い、負けないで……!』

 負けない? 何に? 無理だろ―――最初から俺は敗北者なんだから。そう、彼女を失って、それに縋っている時点で俺は永遠の敗北者だ。結局強くなったつもりで一ミリも前進できていない。笑える。非常に愉快だ。くだらなさすぎて笑える。遠回りして、進んでいたつもりで結局は一歩も動いていない。

 俺の精神はあの日、あの場所に囚われたままだ。

『そんなことないよ、アキは何時だって頑張ってきたよ』

 頑張ってきたように見えるだけだ。結局は道化に遊ばれていただけだ。あぁ、ヒースクリフの傀儡って言葉は正しい。正しく道化の傀儡だ。悔しいけど、もうどうにもならない。燃やせるような意志も気力もない。生きる意味が思いつかない。よくヒースクリフと戦えたと思う。いや、よくここまでだましだましでこれたと思う。

 過去しか見てない男が前に進めるわけがない。

 あぁ―――見える。

 ヒースクリフが一歩一歩、素早い動きで近づくのが。そしてそれを止めようとキリトが疾走する姿も。だがヒースクリフの方が近いし、速度も上回っている。追いつかない。キリトが追いつくころには俺は既に終わっている。奇跡でもなければ俺は助からない。そして、泣いて頼んで、それで授けられるような奇跡には価値がない。

 だから、迫りくるヒースクリフの刃に俺は目を閉じて―――

「アキに―――手を出さないで……許さないんだから!」

 目を閉じて見えないが、誰かの背中が前にあることを感じる。見えない。目を閉ざしていては何も見えない。だがその背中からは確かな温もりと意志を感じる。絶対に守る、その強固な意志を背中から感じられる。酷く安らげる気配だ。ずっと、この存在に見守られてきたような気がする。

 同時に、ヒースクリフの動きが止まった。キリトも、誰もが、その動きを停止する。誰もが突如として現れた”彼女”の存在に戸惑っているのだろう。あぁ、そうだろうな。俺だって驚いてるんだ。てか、おい、何やってんだよ。いいからそこ退けよ。

「嫌だ。退かない」

 頼むから退いてくれ。女を盾にするような惨めな奴だとは思われたくないんだ。せめた最後は、この時だけでもかっこいい俺でいさせてくれ。悪の元凶へと立ち向かった英雄って姿で死なせておくれ。せめて、それぐらいの我がままは許してくれ。

「……貴様、そうか、貴様も―――」

「アキをボコってんじゃないわよ、許さないんだから」

 おい、女だったらもう少し言葉を選んだらどうなんだ。その言い方は少し男っぽいぞ。終わったらもうちょっと違う言い方を……いや、終わりは終わりだ。次はないのに、何を考えてるんだ。

「貴様までは殺すつもりはないぞ」

「アキに手を出さないで」

 声には確かな否定の意志がある。絶対に通さない。傷つける存在は許さない。最初は白痴だった少女が一年以上の経験を積んで見せた成長。それが目の前で、強固な意志として表れていた。。情けない。こうやって女の後ろで縮こまっている自分は何て情けなく、そして屑なのだろうか。女の後ろに隠れているようなやつは死んでしまえ。そう司狼が言っていたのを思い出す。あぁ、今の俺は生きる価値もない屑だ。納得するし同意もする。だからほら、早くそこを退いて俺の生に幕を引いてくれ。

「邪魔をするのなら共々殺すぞ」

「……ッ」

 その声に”彼女”は身を竦める。彼女も痛みを理解している。知ってしまった。白痴だった頃とは違う。恐怖も歓喜も覚えた。だから痛みの意味と、悪意の意味を知り、喪失の意味も知る。だからヒースクリフの言葉がハッタリや狂言ではなく、本気だと理解するが―――

「―――アキは、本当は優しいの」

 おい、そんな事言うの止めてくれ。

「本当は斬ったことを悔やんでいるし、悩んでいる。でも考えても考えても考えても答えが出ないの。何が正しくて、何が間違っているのか。だからいつも苦しんでいるの……何もできなくて、何も解らなくて。でも、それでも!」

 頼む、止めてくれ。そんなかっこの悪い事を言わないでくれ。今までのイメージが台無しじゃないか。

「願っているの! 幸せを! 皆が笑っていられるように、そう願っているの……苦しむのは自分で十分だって、そう決めちゃってるの」

「……」

 止めてくれ、そんな事を言うのを止めてくれよマルグリット。

「そんなアキの事を―――私は愛している」

 今、自分の中の何かに、亀裂が生まれた事を自覚する。好意は理解しても、その言葉をはっきりと聞いたことはなかった。否定したかった。そして聞きたくなかった。聞けば、何かが終わってしまう。何かを理解してしまう。その恐怖がずっとあった。だからその言葉をずっと聞きたくなかった―――。

「泣きそうな彼を抱きしめたいの。震える彼の体を抱きしめたいの。迷っていたらそっと手を握って一緒に歩きたい。涙を流したらその涙を拭いたい―――」

 亀裂が生まれ、何かが音を立てて砕けてゆく。

 必死に塗り固めていた壁がマルグリットの言葉によってあっさりと砕けてゆく。水の様にしみこむ言葉が今まで築き上げたものを砕いて、破壊していく。それ以上の言葉は危険で、今までの自分のアイデンティティーを崩壊させるものだって解っている。解っていて聞きたくないのに、自分の一部はどうしようもなくその言葉を求めている。飢えている。欲しがっている。聞こえる言葉の一つ一つに歓喜し待ち望んでいる。

「私は―――」

 マルグリットの声が強く、部屋に響く。

「―――最上明広を愛している」

 その放たれた言葉に一瞬、誰もが困惑しただろうが、リアルネームだと気づくのにかかる時間はどれくらいだろうか。あぁ、何て事をしてくれるんだこの女は。こんな大勢の前でリアルネームバラすだけではなく告白なんて事をしてくれちゃって。

「……そうか。ならば二人共々死ぬがいいだろう。意志だけならだれでも持てる。問題はそれを貫けるだけの力があるかだ。違うか?」

「……ッ!」

 僅かに開いた目で、マルグリットが両手を広げるのを捉える、盾になろうとしているのが解る。

「さらばだ、カール・クラフトの道化。せめて来世に期待するといい」

 それが慈悲なのだろう。待ち望まれた死が振るわれ、マルグリットごとこっちを殺しにかかる。マルグリットはその存在は強大だが、力の使い方を一切理解していないし、する必要もない。そんな存在だ。彼女は。だからこの剣を受ければ死ぬのは俺だけじゃなく、マルグリットもそうだ。

 だけど、

 おい、この状況どうしてくれるんだよ―――

「ぇ」

 後ろから、マルグリットを抱きしめる。右手で腰を抱きしめ、左手で首を抱きしめ、マルグリットを引き寄せる。緩い、鈍い動きだと理解している。だがギリギリでヒースクリフの刃に掠りつつものがれた。

 マルグリット、そして自分の肌に赤い線が刻まれる。肩口に、マルグリットの美しい白い肌に残る様に赤い線があった。後ろからマルグリットを抱きしめ、体を密着させるように抱き寄せる。腕の中で困惑する様子のマルグリットを感じ、

 目を開く。

「え、あ、あ、アキ……?」

 改めて、可愛いと思う。笑顔もいいが、少し困惑したこの様子も悪くはない。結局は抗えなかった。そして、抗う必要はなかったのかもしれない。いや、抗い続けたからこそ今の俺がいるのだ―――その結果だけは絶対に否定してはいけない。だから、今は感謝しよう。簡単な男だよ俺は。ほんと、馬鹿な男だ。

 そして、ごめんな、トウカ。

 お前に不誠実である俺を許してくれ。ちょっと駄目だわ。―――惚れちまった。

 魂が引き合うような感覚というのもあるが、結構、ストライクゾーンなんだ。

「おい―――」

 ヒースクリフに視線を向け、

「―――俺の女を苛めてるんじゃねぇよ。殺すぞ」

「あ、アキ……? い、今、なんて……?」

 ヒースクリフが此方へと向ける機械の様な、冷たい、鋭い視線は変わらないが、

「十秒、経過したな」

 そうだ。十秒。ライフがゼロになったプレイヤーはその十秒後にポリゴンを拡散させ、死ぬ。が、

「その程度で俺が死ぬわけないだろ?」

 そうだ、そう願ったからだ。それが俺の願いなんだ。あぁ、解るだろマルグリット? 俺たちは輝ける刹那なんだ。この瞬間を、今を、全力で輝いて生きているんだ。たとえ未来が破滅で、この先がないんだとしても、俺は構わない。破滅の道を全力疾走していても俺は輝いているんだ。その美しさは変わらないし、その瞬間は輝き続けたい。俺が消えるその瞬間まで―――俺は誰にも邪魔されず輝く光でありたい。

「アキ、私なんかでいいの……?」

 マルグリットが首を回し、視線を送ってくる。だから答えの代わりに、

 唇を重ねる。ただ唇を重ねるだけの短いキスだ。特別そこから発展するわけでもないが、俺のファーストキスだ。ほら、ちょっとロマンチックだろ?

「ロマンの欠片もないよ……」

 少し頬を膨らませるマルグリットはしかし、嬉しそうにしている。悪い、待たせたな―――マリィ。今まで本当に待たせたな。そんでちょっと蚊帳の外にしているようで悪いなキリト、あぁ、そうさ。負けないさ。あぁ、負けねぇよ。負けるはずがねぇだろ……!

「待たせたな、茅場晶彦」

「気にする必要はない―――此方も準備が終わったところだ」

 そういうヒースクリフは少し距離を開けていた。姿も先ほどの鎧姿ではなく、普段着のサーコート姿となっている。武器は十字剣と盾のままだが、そのデザインや姿は大きく異なっている。おそらくこれこそがヒースクリフが最大限に力を発揮できる姿なのだろう。

「私は本来百層、赤鉄宮で君たちに倒されるためのボスとして正体を九十五層で教える筈だった。
この装備はそこで相対するためのものだ―――もっとも、ただそれだけではないのだが」

 ヒースクリフの姿を見て理解する。その中身は完全な別物となっている。全ステータスは最大値で固定されており、完全に此方を”殺し”に来ることをその濃密な殺意が物語っている。

「もちろん不死設定なんてものはもう意味をなさないだろう。解除してある―――」

 ヒースクリフの視線がキリトへと向けられ、

「倒せるつもりなら混ざるといい」

 あくまでも上から目線。自分が圧倒的強者であることをヒースクリフは宣言していた。そのことに異論はない。実際、システムの全てを把握し、操作できるヒースクリフの存在はこの世界の神だ。否定する事の出来ない事実だが、

 ―――ヒースクリフにも操作のできない事はある。

「勝つぞ、マリィ」

「うん! 勝とうよ、アキ!」

 マルグリットが腕の中から消える。床に落ちた得物を拾い上げ、

「Assiah―――Yetzirah―――」

 右腕が赤銅色に染まって行く。再び手の中には一本の刃が現れる。だがその感触はいつもとは違い、暖かく、そして確かな信頼が感じられる。そして、その刃を構えつつ―――

「―――Briah」

 刃に、腕に文様が現れる。規則性も意味も理解のできない幾何学模様だ。だがそれは確かな力の発現の証であり、先へと進めたことの証でもある。


                           ◆


「その程度の有象無象に負ける私の■■でもなかろう? あぁ、頑張りたまえ。その程度で躓くようであれば到底未来などありはせぬよ。さぁ、我々を楽しませてくれたまえ」


                           ◆


 マルグリットと心を繋げ―――共に最初の一歩を踏み出し、歌い上げる。

 歌を。

 渇望を。

 この身の崩壊を止め、そして自分を殺す願いを。

 ―――アインクラッド最後の戦いが始まる。
スポンサーサイト

| 断頭の剣鬼 | 10:55 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

やっべぇ、さすが女神! そしてそのパートナー!
「人の男(女)に手を出してんじゃねぇ」って台詞好きだわー。
キリットさんが空気だけど、このままで終わらないって信じてる。アスアスもキリットさんも、女神も、ヒスたんも頑張ってくれ。
というか創造の詠唱楽しみ。

| ろくぞー | 2012/08/21 12:19 | URL |

ああ、何度でも言いたい。
マリィさんマジ女神(*´д`*)
アスアスは主人公の貫禄全開ですな。キリキリもヒスさんからフリきてるから是非がんばってほしいッス!
んで、黄金閣下の出番まだですか(笑)

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/21 12:35 | URL | ≫ EDIT

アスアスがようやくデレた。
これで勝つる!
んで、閣下まだ~?

| 御前 | 2012/08/21 13:17 | URL | ≫ EDIT

サイアスが、デレターw
閣下の出番はまだー?

| とっつき | 2012/08/21 14:51 | URL |

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| | 2012/08/21 16:30 | |

妖怪さんがデレターーーヽ(^0^)ノにじの時よりも早い!
このあとどうなっていくのか私気になります!

| タッツミー | 2012/08/21 16:51 | URL |

剣鬼がデレた!
閣下非参加なだけでインフレにブーストかかってら
パラロス組までにどうなるか期待

| ぜんら | 2012/08/21 19:59 | URL |

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| | 2012/08/21 22:45 | |















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://tenzodogeza.blog.fc2.com/tb.php/117-4723a73d

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。