陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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二刀流 ―――デーモン・バスター

 マキナのパンチを食らってリザードマンロードが迷宮区を駆け抜ける。

 否、駆け抜けるのではない。

 吹き飛んでいるのだ。

 バックラーで防御した、武器を合わせてパリィしてきたなど、そんな事は些細な事だと無視して、マキナの放ったパンチはリザードマンロードを吹き飛ばした。アインクラッドでモンスター殴りなんて競技が存在したら確実にチャンピオンになれるってぐらい吹き飛ばしたが、

 エフェクトの派手さと裏腹に、与えたダメージは三割だけだった。

「どうだ」

 それを言ったマキナの顔はこっちを向いており、これが手加減だと言わんばかりにドヤ顔を晒してくる。もしこれがマキナの言う手加減だとしたら、

 もうこいつを絶対に信じない。


 やりきった顔でこっちを向くのはいいが、ライフが七割近く残っているはずのリザードマンロードは殴られ、壁まで吹き飛び叩きつけられ、そして跳ねて少し帰ってきた所で倒れてピクリとも動いてない。明らかに外装が無事なだけで中身が死んでいる。ガワだけ生かせばいいという話なのかマキナ、と言いたくなるのを我慢して、

 地面に倒れて動かなくなったリザードマンロードの首を切り落とす。

 この部位だけは防御力にほとんど関係がなくダメージが通るため、違和感なくリザードマンロードが倒せた。そして倒したところで素早く振り返り、キリト達の方を見ると、

「すげぇ……」

「もしかしてSTR極? レベルは?」

「修練の結果だ」

 そろそろマキナには常識を教えた方がいいかもしれないと思い始める。


                           ◆


 結局クラインに流され承諾してしまったため狩りには参加したが、マキナと共に全力で手加減し、違和感のないように互いをカバーしながら戦った。ただ、やはりキリトは少し気になっていたのか、此方が戦う様子をたまに見ては小さく笑っていた。やはりキリトから見てて無理があったのだろう。

 そのまま戦い続けて数十分が経過したとき、

 ―――迷宮区の奥から悲鳴が聞こえた。

「ッ、まさか……!」

「放っておけない―――」

「アスナ! クソッ!」

 悲鳴の主は確実に先ほど奥へと向かった軍のプレイヤー達だろう。それを放っておけないのか、敏捷ステータスを最大で発揮させたアスナはその二つ名の様に、閃光の如く迷宮区を駆け抜けて行った。キリトやクライン達も即座に走り、アスナを追う。

 その様子を頭を軽くかきむしりながら眺め、

「っち」

 軽く舌打ちする。この流れはあまりよくないと認識する。できる事なら今はボス関係と関わりたくない。先ほどのマキナは手加減出来ると言っていたが結果であれなのだ。それなのにボス相手となると―――正直上手く加減できる自信がない。だからこれは嫌な流れだ。流されるように状況が進んでいる。

 まるで誘導されているかのように。

「それでも行くのだろう?」

 マキナが向けてくる視線は問うているのではなく、確信した者の目だ。確実に此方は行くと、そう確信している。

 あぁ、そうだよ。行くよ。行くっきゃないんだよ……!

 数ヶ月前の完全な復讐者であった自分ならいざ知らず、今の自分は心を完全な憎しみで覆う事は出来ない。だから、こういうのを放っておくことができない。昔、開始から数か月後の自分に戻っているのが解る。だからといって、

「止まれるわけでもない」

 キリト達の後を追いかける様に迷宮区を駆け抜ける。


                           ◆


 迷宮区を駆け抜ける途中、避ける事の出来ない戦闘が三回ほど発生した。そのうちそれらのターゲットを引き受け、キリト達を先に進ませながら、先頭集団にやや遅れてボス部屋に到着する。部屋に踏み込んで見えた状況は非常に悪かった。

 目の前ではちょうどコーバッツがポリゴンを散らして死んだことが確認でき、それを見た軍の生き残りがかなり錯乱している。誰よりも正義感が強いのか、アスナがダメージディーラーで防御力が低いにも関わらず一瞬で部屋の中央にいる大型ボス≪Gleam Eyes≫グリーム・アイズへと肉薄し、ヘイトを取ってからパリィと武器防御だけで時間を稼いでいる。

「クソ! クソ! 死んじまったら意味がないだろ……!」

 クラインがそんな言葉を漏らしながら素早くギルドメンバーに救出の指示を出す。キリトも一気にグリーム・アイズへと接近し、大剣を振るう巨大なボス相手に時間稼ぎにでる。ここで、盾の使えるタンクプレイヤーが前線維持をしてくれれば少しはマシになるのだろうが―――軍のプレイヤーにそれは期待できないし、期待するべきでもない。

 しかし、思っていたよりも状況はいい。

 想定していた最悪が軍の完全壊滅だとすれば、今の、この状況はまだ救いがある。ここは、素早く軍のプレイヤーを連れてここから脱出すべきだろう。

 だが、

 体は動かない。

「……」

 今、ここで自分にできる事はない。いや、してはいけないのだ。前に出て戦う? そのままボスを倒してしまうだろう。なら逃がすか? いや、それはクライン達が―――

「おい!」

 入り口の方から声がする。

「扉が開かねぇしここ、結晶無効化空間だぞ!」

 つまり逃がす事は出来ないし、倒すまでは外に出る事の出来ないタイプのボスだ。五十層ではまだ回復も部屋の脱出もできた事を考えると、ボスは強くても難易度は低かったのかもしれない。背中に下げてある得物に手を伸ばそうとして―――止める。

 ……無理だな。

 ここで倒すのに協力してしまえば確実に正体がばれる。マキナは手加減だと言っていたが、さっきは結局マキナが殴ったやつの首を落としていただけだった。手加減なんてできる筈もない。だから得物に伸ばした手を下ろそうとして、

「どうした」

 マキナの声がする。

「戦わんのか」

「……無理だ」

 駄目だ。俺は化け物だ。どう足掻いても化け物だ。キリト達の様な真人間と一緒にいられる存在ではないのだ。今回一緒にいてはっきりと解った。俺たちは違う生物だ。関わるべきではない。

「貴様は」

 マキナが言葉を続ける。

「相も変わらず人と化け物のガワを変えるのが苦手だな」

「うるせぇ」

 自覚しているが、どうしようもない事実だ。なのに、

「気にするな。好きなようにやれ」

 それだけ言ってマキナが黙る。あぁ、何だこいつは。言いたい事言ってやりたいことだけやって、黙る。何も語らないと思ったら的確に突いてくる。ほんと、なんなんだこいつ。

 剣戟の音が響く。

 前方、前線でキリトがグリーム・アイズの攻撃を大きく跳ね上げるのが見えた。その瞬間、此方に信頼のまなざしを向けているのが解る。おい、馬鹿、やめろ。俺をそんな視線で見るなと言いたい、言いたいのに―――

「―――スイッチ」

 キリトが下がるのと同時に、

 体は勝手に前に出てた。

 ……っは?

 自分でも一瞬行動に戸惑った。体は勝手に前に出るし既に手は得物の柄を握り、鞘から引き抜いている。刀をレイピアの様な構えで右手で持ち前へ踏み出す。それはベアトリスが長剣を構え、突きを放つのと同じ体勢だ。いや、そういう問題じゃない。なぜ俺は行動している。ここは戦いに参加せず、傍観に徹するのがベストじゃないのか?

「十秒、十秒だけ持ってくれ―――スイッチ!」

 なのに、

「あいよ」

 勝手に答えた。

『アキ、素直になろうよ』

 ……いや、もういい。素直になろう。頼りたい。頼られたい。その意思はある。こうやって頼られるのは純粋に―――嬉しい。信じてくれた仲間の心には応えたい。十秒とキリトは言った。倒す事は完全にキリトに任せるとする。だからこの十秒はきっちり、しっかり足止めしよう。

 その方法は既に覚えている。

 踏込と同時にグリーム・アイズの目前へと到着する。構えは変わらず長剣で突きを放つような体勢。ベアトリスから言わせれば騎士の剣術らしい。が、そんな事はあまり興味がない。興味があるのはこれが実戦で通じるか否か。そして通じる、

 だから突きを放つ。

 体の左側へと引っ張った右腕と刃を前方へと突き出し、グリーム・アイズが動かそうとしていた剣を握る左腕の肘の内側を突く。動きの起点となっていた箇所が攻撃され、グリーム・アイズの動きが鈍り、その瞬間に戻した刃を再び、今度は肩に突き出す。

「―――っし」

 グリーム・アイズの動きの起点をつぶす。膝を、肘を、喉を、指を、動きの起点であり始点を素早く突く事によって相手の動きを抑制し、それを封じ込める。

「凄い……」

 針の穴を通すような精密な動作が必要とされるこれをベアトリスが難なくやっていたのを思い出す。普段はふざけた事を言っているがやっぱり化け物だ。化け物だが、この点においては尊敬できる。

「一撃、二撃、三撃……!」

 一息の間に突きを三発ほど繰り出し、グリーム・アイズの行動を封じる。完全に動きを見切られ、動きの前に動きをつぶされるグリーム・アイズは、ただ茫然とその場で立ち尽くす事しか出来ない。

 ただ、これが何時までも続くわけがなく、

「グルッ―――」

「ッチ」

 数ミリだが切っ先がズレた。その瞬間を狙ってグリーム・アイズが薙ぎ払う様に大剣を振るう。

 が、それこそ好都合というものだ。

 バク転で薙ぎ払う大剣の動きを回避しながら、素早く大太刀を逆手で握り、

「スイッチ」

 後ろへ体を滑らせながら体を回転させ、その動きで大剣を床へと叩きつけ衝撃を生み出し、グリーム・アイズの復帰にわずかなラグを作る。その瞬間にはキリトが前へと飛び出る。

 両手に得物を握った状態で、

「いっくぞぉ―――!」

 即座にソードスキルの光を纏わせた剣をグリーム・アイズの顔面にキリトが叩き込む。グリーム・アイズがそれに耐えようとして―――

「おぉ―――!」

 そこから始まる十六連撃に大きく仰け反る。キリトの動きはソードスキルをさらに速く繰り出そうと、動きを先に押す様に、加速するようになっている。素早く、細かく、片手でパリィしソードスキルを叩きこむ。それを高速で繰り返すキリトは余裕をもってグリーム・アイズに何重もの斬撃を繰り出し、通していた。一つのソードスキルが終わり、エフェクト光が散る中で別のソードスキルが発動し、それもまた散る。

 二刀流のソードスキルが前のソードスキルのエフェクトが散りきる前に発動し、幻想的な光景を生み出す。

 その光景を軍も、クラインも、アスナもただ見つめ、

「これで―――」

 キリトの握る二刀が音を超えてグリーム・アイズに突き刺さる。

「終わりだ」

 その一撃でグリーム・アイズの体力が完全に全損し、砕け散る。グリーム・アイズの体を足場にしていたキリトが着地し、二刀を軽く振ってから二本とも鞘の中へとしまう。その光景を驚きと共に多くが見ていたが、キリトが片手をあげてくるので、

 近づいて手を合わせる。

「やるじゃねぇか」

「俺も負けっぱなしは趣味じゃないんだ」

 つまり、キリトもあの敗北から何もしていなかったわけではない、という事だろう。おそらく何度も何度も奥の手である二刀流で戦い、自分に一番有用な形に”最適化”するため、ソロで戦い続けて来たのだろう。その結果が、今、グリーム・アイズへの勝利という形で見えた。

「なんだそりゃあ―――!?」

 声を爆発させたクラインが走ってキリトの肩を掴み、キリトを強く揺さぶる。

「おいおいおいおいおい、なんだよなんだよなんだよそれ!」

「待て、言うから、言うから、言うから揺らすのはやめてくれ」

 クラインに肩を掴まれ揺さぶられていたキリトが落ち着くころにはアスナが近づき、周りの視線はキリトに集まっていた。そこで少し困った様子で、

「その……エクストラスキル≪二刀流≫」

 おぉ、と周りから感嘆の声が上がる。エクストラスキル、それはつまり自分たちにも習得できる可能性があるし、何よりもボス相手に見せた異常な突破力は素晴らしい、そう思っているのだろう。さらににじり寄る集団に少し引きつった笑みをキリトが浮かべている。

「で、条件は?」

「俺も解らない。ある日スキルスロットを見たら追加されていたんだ」

「そうかぁ……」

 クラインが少し落ち込むようにキリトから離れる。おそらくキリトの言葉を疑っていないのだろう。

「いや、俺もお前が黙っていた理由は解るさ。ネットゲーマーってのは嫉妬深いのが多いしさ……でもよ、それ、お前しか使えないってことは……」

「うん」

 キリトが頷き、アスナが言葉を引き継ぐ。

「団長の≪神聖剣≫と一緒でユニークスキルよね?」

 アスナのこの言葉が、近いうちに来る波乱の始まりだった。
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| 断頭の剣鬼 | 10:10 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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