陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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二刀流 ―――ゴーイング・フォーワード

 休憩エリアに新たに現れたのは鎧姿の集団だった。

 先頭の隊長格の男に続くように、隊列を組んで現れた集団は休憩エリアに入ってくると休まず、隊長の後ろにつく。隊長の動きが止まってから動きを止め、

「休んでよし!」

 そう言われて初めて休憩エリアの床に鎧姿たちが座り込む。誰もが疲れて座り込む中、隊長格の男だけが疲れを見せない表情で此方へと視線を向けてくる。特に興味が湧くこともないから視線を集団から外す。

「私は≪アインクラッド解放軍≫のコーバッツ中佐だ」

 で?


『アキ、本当に興味なさそう』

 本物の軍人と行動していれば如何にアインクラッド解放軍がお遊びの軍隊か解る。基本的に形だけで中身ができていない組織だったのだ。いや、初期の頃のアインクラッド解放軍はまた違ったのだろうが、現在のアインクラッド解放軍は聞くに耐えない話ばかりの状況となっている。だから正直言ってアインクラッド解放軍には興味ないし関わりたくもない。一生そこらへんで軍隊ごっこしてろとは思う。

「諸君らはこの先のマッピングを完了しているか?」

「ボス部屋のまではマッピング完了しているぞ」

 ボス部屋までのマッピングが終わっていると聞いて、ちょっとだけ悔しかったりする。先を越された、という考えは浮かぶ。

「ではそれをいただこうか」

 さも当然の様にコーバッツはそう言った。

 この先に用事があるのか、コーバッツはマップデータの提供を要求していた。マップデータとはそれなりに高価なものだ。共有するだけで死亡率が大幅に下がる。要求されたから渡すというようなものでもない。だがコーバッツは自分勝手な理論でマップを要求していた。

 もちろん勝手な言葉だ。

「おいおい、それはねぇんじゃねぇかよ”中佐”殿」

 クラインが口をはさむ。

「最前線のマップデータと言いやあ千金の価値の代物だぞ。おい、キリト。こんな奴の言葉聞く必要はないぞ。お前マップをいったいなんだと思ってんだよ」

 何時になく攻撃的なクラインの言葉に少し驚かされるが、クラインも決して聖人君子というわけではない。同情し、恭順もするが、不当なものには逆らう明確な意思を持った人間だ。だがアインクラッド解放軍、コーバッツへの態度が嫌に攻撃的なのはやはり個人的にアインクラッド解放軍に対して思う事があるからだろうか。

「我々は常日頃からアインクラッドの攻略と解放を願って活動している。故に一般人である諸君らが私たちに協力するのは当たり前の事であり、常識の範疇だ」

『……アキ、なんかこの人可哀想』

 コーバッツの言った言葉に呆れていると、マルグリットがこの男を”可哀想”と表現する。だが、その表現は間違いでもないだろう。実際に可哀想だ。

 この男はおそらく長生きしない。

 たぶん、今日死ぬ。

 マルグリットが言ったのはそういう事ではないだろう。完全にアインクラッド解放軍を本物の軍隊と信じ、そして他のプレイヤーは一般人として考え、行動する辺りの事だろう。つくづく救いようがない。傲慢さは自分の身を焼くだけだというのに、それを理解せずに破滅の道を一直線に進んでいる。

「いや、いいよ。どうせ街に戻ったら公開する予定だったし」

「キリト!」

 キリトの行動にクラインが声を上げるが、アスナもマキナも俺も何も言わない。アスナの場合はキリトを信じてだろうが、俺とマキナの場合は純粋にこの集団に対する興味が湧かないからだ。怒りや感情というものは相手を意識するからこそ生まれるものであり、真に興味がなければ行動や言動は本当にどうでもよくなる。つまり生き死にに関する事でさえ興味がないのだ。

 キリトがマップデータを取り出し、それをコーバッツに差し出す。素早く受け取ったコーバッツに対して、

「この先チョロっと覗いてきたけど、見たところ攻略はちゃんとパーティー組んだ方がいいぜ。それにお前が大丈夫でもお前の仲間たちはそうでもなさそうだぞ?」

 そう言うキリトの視線の先には疲れて床に座り込むコーバッツの部下たちの姿がある。コーバッツはまだ大丈夫そうだが、明らかに部下の方はついてこれていない。が、コーバッツはそれを完全に無視していた。

「その判断は私がする。協力に感謝する」

 最後のとってつけたような言葉を吐き出すと部下たちへと向き直り、立たせると再び隊列を組み直して休憩エリアを抜け、まっすぐ奥へと向かう。その背中姿を目で追いながら、アスナが言葉を零す。

「噂は本当だったんだ」

「噂?」

「うん。アインクラッド解放軍が方針を変えたって話」

 確かアインクラッド解放軍の方針は攻略に関わらず、金策と全体の装備の充実がメインだったはずだ。それが最前線にいる意味は、

「五十層でアインクラッド解放軍が大打撃うけたわよね?」

 そこで視線が俺へと集まる。

 ……まぁ、言いたいことは解る。

 アインクラッド迷宮区第五十層。

 二十五層から始まり、クォーター毎には今までにない強大なボスが設置されていることを二十五層の結果から予期した攻略ではあったが、五十層のボスは予想を超えて凶悪だった。

 結果、攻略組は壊滅した。

 その時残ったのは極少数の人間だけだった。

 ―――それが、俺と血盟騎士団の団長であり、≪最強≫のプレイヤーと呼ばれるヒースクリフの名を余計に売る行為となった。

 五十層の攻略部隊は五十層のボスによって壊滅的な打撃を受けた。アインクラッド解放軍のプレイヤー達はそのほとんどが死亡し、攻略組プレイヤーも大勢死んだ。逃げるのにも時間が必要な状況でくだされた決断は時間稼ぎ。誰もが死を確信できるその役割に立候補したのがヒースクリフで、その遊撃に出たのが俺だった。他にも数人残ったが、一番特筆すべきはヒースクリフの異常性だ。

 結果、ユニークスキル≪神聖剣≫をヒースクリフはそこで初披露し、

 ボスモンスターによる攻撃をすべて一人で受け切った。

 その際驚愕すべきなのはヒースクリフがターゲットを一人で集め、全て一人で受け切ったのにもかかわらず、ヒースクリフのライフは絶対に八割以下にはならなかった事だ。それこそ鉄壁という言葉を体現するように、削りダメージ以外でヒースクリフのライフは減ることがなかった。そして、俺は、その隙を突いてボスの首を落とした。連携をするつもりも打ち合わせもなく、完全なアドリブでボスをほぼ二人の活躍で落としたことは色んな意味で知名度を広げる事となった。

 ヒースクリフは畏怖される存在として、

 そして俺は恐怖される存在として。

 まぁ、あの頃は少しやんちゃが過ぎたとも言えるのだが……。

 アスナの言葉に耳を傾ける。

「最近軍の中で攻略を進めようって動きがあるのよ。軍が結成された本来の目的から離れすぎてるって、そういう意見が出てきて少数精鋭のメンバーを攻略に入れて、結果を出そうって動きがあるって聞いてたんだけど……」

 今のメンバーを見る限り最前線で戦えるレベルには見えるが、ボス攻略に参加できるかと問われれば、無理だとしか答えられない。どう考えてもあの装備、あの数の人員では自殺をするようなものだ。到底ボスに勝てるはずがないのは明白だ。

 さすがにそこまで理解できない無能ではない事を祈ろう。

「んー、そこまで馬鹿じゃないと思うんだけど……」

 チラ、っと此方に視線が来る。

「なんだよ」

「いや、何も言わないのかなぁ、って」

「あの連中自体もう興味がない。アレが内部から分解するのは目に見えている。≪聖竜連合≫は俺が引導を渡しちまったけど、軍の方はアレ、近いうちに崩壊が始まるだろ」

 見ていて解る。腐敗しすぎたアインクラッド解放軍は長持ちしない。長くて二か月、短くて三週間ぐらい、だとは思っている。それ以上は組織以前に、外部からの軽い衝撃で崩されそうだ。

「と、まあ、軍への興味は完全になくした。消えても残っても正直どうでもいい」

「これはまたドライな……」

 キリトが引きつった笑いを浮かべ、視線がマキナへと向く。マキナも意図を察したのか、

「興味がない」

 その言葉だけで終わらせる。マキナが喋った後には無言の空間だけが残った。全く協調性のかけらもないのに芸人なんてどうなってるんだドイツの芸能界とか思うが、正直考えたくもないのでスルーし、

「で、どうするんだ?」

 別の切り口を出す事にする。ニヤリ、と笑みを浮かべてキリトとアスナを見る事とする。最初にあった時の事を思い出しキリトとアスナが顔を引きつらせるが、

「キリトとアスナのデートを邪魔するのは正直気が引けるんだよな」

「で、デートじゃない!」

「そ、そうよ!」

 この初々しい反応が堪らない。こういう反応は思春期の”普通”の男女にしか見られなくて、自分の様に窓ガラスぶち破ったり未知を探して風俗へ突貫した高校生活を送った人間からすれば実に見ていて面白い。こういう反応がすごい新鮮だ。司狼はエリーとイチャイチャするし香純はオカンだし玲愛は誘惑してくるし。あぁ、それに比べるとこの二人は何て初々しい事やら。心が浄化される気分だ。いいぞ、もっと恥ずかしがれ。付き合いだしてからではこの反応が見れないのだ。あとに残るのはバカップルのウザさだけだ。

「デートォ!?」

 クラインが過剰に反応し、キリトとアスナが顔を赤くする。ついでに風林火山のメンバーも過剰反応する。

「キリトの裏切りものめ……!」

「この天然誑し込み機がぁ……!」

「この野郎ゆるさねぇ」

「おい、待てよ、俺に対するバッシング酷すぎないか? アスナには何も言わないのか!?」

 視線がアスナへと一瞬集まり、再びキリトへと集まる。

「美少女は全てが許される」

「おい」

 さすがにキリトも反応せざるを得なかった。

『私は許される?』

 何時からマルグリットの神経はここまで図太くなったのだろうか。表情豊かになったのを厄介だとするか、もしくは使いやすくなった事を喜ぶべきか、その判断はつかない。

「ふ、ふふふ」

「おい、アスナ……」

「いや、面白くて……ごめんね」

 そんなアスナが面白かったのか、キリトも少しだけ笑い声を零し、クラインもそれに釣られた笑い声をあげる。

「ツボが解らん」

「お前は解るな」

 笑いのツボを把握できていないマキナが死んだ魚の目を向けてくるが今はそれを放っておくこととする。ともあれ、そういうものなのだろう。平和で、特に特別な事でもないけれど、少しだけ理不尽だけど、この瞬間が楽しいと、そう思えるだけなんだろう。少しだけ、胸の奥に湧くこの暖かさは。

「で、クラインは……」

「おう、レベル上げだぜ。お前は?」

「こっちはマッピング」

 キリトが納得する。この場で自分とマキナを抜けば、攻略から抜けた理由を知っているのはキリトだけだ。だからなぜ攻略せず、マッピングだけに留めているのかをキリトは理解した。と、

 そこでクラインが肩を組んでくる。

「おい」

「んだよ、一緒に三十路を目指す仲間同士仲良くしようぜ」

「嫌だよそんな仲間」

「んだよ、ツレねぇなぁ……まぁいいや。せっかく集まったのもアレだし、一緒に狩りしようぜ」

 ……困った。

 クラインの勢いに押されているが、ここでパーティーを組んだりすれば実力差、というよりこの世界で明らかにチートと呼べる存在であることがバレてしまう。言われ慣れているし特に気にすることでもないが、友人と思える人物が離れて行ってしまう事を考えて覚えるこの痛みは、

「気にする必要はない」

 マキナの声がする。

「手加減を覚えろ」

 思えば最初、マキナと出会った時、一撃で殺されてもおかしくない掌撃と攻撃を食らったのに体力が残されていた。そう考えると手加減する方法をマキナは知っているのかもしれない。少し悩んだ末にクラインの案を快諾し、キリトとアスナも快諾する。

 が、

 今、俺は純粋に喜んでいる。

 これは果たして本当に―――。
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| 断頭の剣鬼 | 10:42 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

バッツ中佐ぇ……
階級は下だけど、魔砲●女な少佐とは比べようもない(笑)
んで、いい加減バカップルはじ(ry

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/14 19:27 | URL | ≫ EDIT















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