陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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二刀流 ―――デイ・アンド・ライフ

 既に場所を知っているため、休憩エリアへとたどり着くのには苦労はなかった。道中モンスターに出会うこともあったが、まさに鎧袖一触。軽く”触れる”だけで砕け散る相手に止められるわけも時間を稼がれるわけもなく、あっさりと休憩エリアに到達する。休憩エリアは街などと同じく圏内保護されているエリアで、モンスターが入ってこれない場所となっている。

 ぶっちゃけモンスターいてもいなくても変わらないんだけどな。

 そう思えるのは自分が明らかに”特別”だからだろう。

 身体的には別に休む必要はないのだがそれでも休もうと思うのは、心はまだ人であるという証なのだろうか。休憩エリアに到着したら端の方の壁に立ち、それに背中を預ける。マキナも横で同じように背中を壁に預ける。

 軍服の男とローブで姿を隠す男が二人迷宮の休憩エリアで立つ。

 かなり怪しいものがある。


 マキナには感謝しているが正直他の団員と比べるとどこか苦手な部分がある。会話が長続きがしないのも原因の一つだろうか。さて、どうするべきか、

 そう思ってマキナに視線を向けると、

「……」

 白目をむいて舌を伸ばすマキナの姿があった。

「ぶっ」

『げほっげほっ』

 思わず咳き込むほどにインパクトがあった。というよりも真面目なマキナからは決して想像のできない愉快すぎる顔だった。キチガイすぎるとも言える。色々と我慢できずに口から常識とか吐き出しながらマキナの一発芸にむせる。

「お前それやめろ!」

『お、お腹が苦しい……』

 マルグリットでさえ駄目だったようだ。

「……シュピーネに一発芸を持っていた方がいいと言われた」

「方向性がおかしいから! オメーの芸じゃねぇーから!」

 シュピーネの一言で暴走したのなら後で何かアドバイスをするように頼もう……。

「ふむ、ベアトリス案のマッキースマイルはボツか……」

「犯人はあの色ボケか!」

 何て最終兵器をマキナに搭載しやがった。これでは俺たちの腹筋が破壊されてしまう。

 変な事で悩んでいると、では、とマキナが言って、

「次のネタを……」

「え、まだあるの?」

「あぁ、トバルカイン案、そしてベイ案がある」

「黒円卓は何だ。暇人の集団かよ」

『見たーい』

 地雷を踏む可能性が高いからなるべくスルーしたいんだけど。何か珍しくマキナに頼られている気がするため、断るに断れない。これも、少しは現れた余裕なのかと思いながら、

「こ、来い」

「ふっ、そうか。トバルカイン案は中々自信があるぞ」

 その自信は軍人としてみれば頼もしい事だろうが現在の状況では全く持っていらない。早く捨て去って欲しい。が、すでにマキナは一発芸に入る準備ができたのか、軽く喉を鳴らし、普段の死んだ魚の目からは想像もできないさわやかなスマイルを浮かべ、

「すごく……一撃必殺です……」

「ぶふっ」

『お、おなか、お腹が痛い……』

 かなり感情豊かになってきたマルグリットはこの際置いておくとして、あのバカップルはマキナをいったいどんな方向へ持って行こうとしているのだろうか。いや、芸人と名乗っている時点でもう色々とアレなのは確かなのだが、

「封印。ベアトリスとトバルカインの案は封印」

「何故だ」

「そんなリーサルウェポンを放置できるか」

「? 有効であれば使用すべきではないのか?」

「お前は小隊を倒すのに核兵器を使うのか?」

「ふむ……」

 個人的にはいきすぎた表現だとは思っていない。この二つは色んな意味で危険すぎる。いや、いつか勝手に使う時が来るだろうが、その時は是非とも俺のいない場所で使ってほしい。俺が巻き込まれない分にはどうでもいい。

 そして次に気になるのが、

「ベイの案は?」

「一人でできるショートコントを作って用意しておくそうだ」

「妥当だなぁ……」

 一発ネタではないけど、それ以外をやらせる訳にはいかないからここら辺が妥当だろう。ともかく、この話はここで終わりだ。これ以上地雷の上でタップダンスをするような趣味はない。

「ふぅ……」

 軽く溜息を吐き出したところで、

「ん?」

「む」

 迷宮区、入り口の方から何者かが近づいてくる気配がする。誰に言われるでもなく、反射的に隠密スキルを発動させ、姿を隠す。

 ラフィン・コフィン討伐の際にかなりの敵を殺したことも、そのあと急に消えてしまったのもそれなりに有名な話だ。好きなだけ暴れたうえで勝手に消えたという話はもはや他のプレイヤーからは煙たがられる理由になっている。キリトが違うと証明したがったようだが、ソロがどれだけ言ったところで無駄だ。

 こうやって、最前線の迷宮で誰かが来るたびに自然と隠れてしまうのは面倒を避けるための手段だ。

 数か月前だったら気にせずにいただろうが、どうなんだろうか。やはりこれは弱くなったのか、それとも強くなったのか、

『アキ、考えていても仕方がないよ』

「……」

 それもそうなのだが、答えが出ないとしても求めてしまうのが人という生き物なのだ。

 隠れる気が微塵もないマキナはそのままにして、風景に同化するように発動されている隠密スキルだが、入ってきた人物を見て思わず隠密スキルを解除する。

 入ってくるのはキリト、そして白と赤の服装の女剣士。その美貌と実力から広く知れ渡っている攻略組プレイヤー、≪閃光のアスナ≫だ。思わず視線をマキナへと向け、

「洒脱さは大事だ」

 これを予想してあの言葉をキリトに……!

 等と変な戦慄をしながら、再び隠密スキルを発動させる。マキナを軽く肘で小突き、隠密スキルを使う様に促す。意図を察したのかすぐに隠密スキルを発動させ、気配までをも完全に消し去るマキナを見習いながら、休憩エリアに入って、床に並んで座るキリトとアスナを見る。

 少し離れている位置からでも二人の会話は十分聞こえている。その内容を聞いていると、キリトがアスナとパーティーを組んでいる様だった。あの朴念仁もついにパーティーを組む時が来るとはな、等と思いつつ二人を見ていると―――

『―――っても朝は涼しいからね。ここに来るまでに多少スタミナ減ってるし』

 ……あぁ、メンタル弱ぇ。

 ついに幻覚を見るほどに昔が恋しくなった……ってわけじゃない。そうか、キリトとアスナが二人並ぶ姿は、どこからどう見ても恋人同士だけど、それをたぶん受け入れてなくて……まるで自分の昔を見ているようでもどかしい。もどかしく、甘酸っぱい。なんというか自分は昔はこんな事をしていたのかと思うと顔が燃え上がりそうな気分だ。

 だが、まあ、

 あの時茶化してきたクラインの気分は解る。

 見ていて落ち着くのだ、幸せな人は。今、この瞬間を誰よりも楽しんでいるということが解る。だから、報われなかった自分からすれば、

『アキ……ごめんね』

 お前が謝る必要はない。あぁ、それは筋違いなんだ。謝ったところで過去は変えられない。ならやるべくことは清算する事のみだ。そしてそれは、茅場晶彦の首を落とすこと以外には見えない。そうだ、当初からの目的は変わっていない。

 だけど目の前の光景を見ていると、こんな幸せな日々が―――

「誰だ!」

 そこで揺らいでしまったか、気配が僅かにだが漏れてしまう。キリトもあのララフィン・コフィンと戦った夜を通して精神的に、そして技術的に大きく進化している。気配を消さない限りは絶対にバレるだろう。諦めて隠密スキルを解除する。即座に警戒するキリトとアスナだが、ローブのフード部分を下す事でキリトが警戒を解く。

「あ、サイアス」

「よっ」

 マキナも隠密を解く。視線が満足したか、と問うてくるがとりあえず満足したとだけ送り返し、キリト達に一歩近づく。

「≪断頭のサイアス≫……!」

 アスナが警戒し、腰の得物に手を伸ばそうとしたので、体の動きを止める。≪閃光のアスナ≫と言えば”あの”≪ヒースクリフ≫がギルドマスターをやっていることで有名な最強ギルド、≪血盟騎士団≫の鬼の副長だ。前参加していた攻略会議を見る限りアインクラッドの攻略に取りつかれたようなバーサーカーで、自分に近しい部分があると感じたが、

「何だキリト、恋人作ったんなら俺にひとこと言えばアドバイスを言ったものを……」

「ち、違う!」

「そ、そうよ! そんな関係じゃないわよ!」

「そうそう! 俺たちちょっとパーティー組んでるだけ!」

「少しだけ一緒に組んでキリト君の世話をしているだけよ!」

 焦っているのか口から余計な情報が漏れ出ている。面倒を見たりと、パーティーを組んでいるのは確実そうだ。

「仲がいいな」

 マキナがさらっと零した言葉にキリトとアスナが更に慌てだし、アスナの手が完全に柄から離れていることを確認する。おそらくマキナの言葉は最後の一押しのためだろうが、アスナも簡単すぎるほどに警戒を解くのは若干無防備かもしれない。

 圏内でも殺せる手段はある。

 それでも、こうやって警戒を解かれるのは信用の証、だと思いたい。

 ……前は信用されたいとは思わなかっただろうけどな。

 再びループしそうな思考を断ち切り、やけに焦っているキリトとアスナの様子を見ていると、休憩エリアの入り口の方から更に足音が聞こえてくる。そちらの方に視線を向けると、此方も見知った顔の集団だった。

「おお? おお……? おお! キリトにサイアスじゃねぇか!」

 無精髭にバンダナというスタイルが固定化しているプレイヤー、クラインだ。この男とも数か月ぶりの再開だが、元気そうで安心するものがある。キリトと共に片手をあげて挨拶すると、ギルドメンバーを引き連れながら小走りで近づいてくる。

「よおクライン、相変わらずしぶとく生き残ってるようだな」

「おいおい、勝手に殺すなよ……っていうかお前ら」

 クラインが俺とキリトを見渡し、嬉しそうに笑みを浮かべ、

「へへっ」

「気持ちが悪いんだよ」

「痛ぇっ!」

 クラインの膝の裏に軽い蹴りを入れる。

 が、この男としてはこの状況は嬉しいものがあるんだろう。それこそずっと前、まだトウカが死んでいなくて俺もキリトもレベルが低かったころ、そんな時と同じように笑っていたのが、嬉しかったのだろう。

「お前今年で二十四だろ? 俺と二つしか違わないからいい加減大人面やめろ。大人ってのは」

 マキナに人差し指を向ける。

「こういうのを言うんだ」

「お、おう」

 今まで黙っていたがため注目を浴びなかったマキナに視線が集中する。死んだ魚の目に軍服、屈強な肉体と、どこからどう見ても堅気の人間には見えないこの男に対して、リアクションに困っているのだろう。

「マキナだ」

「く、クラインです……」

 多分それがマキナの最大の努力だったのだろう。

「こいつはマキナ、俺が世話になっている所の大隊長だ」

 そこであー、と声を漏らして何やら納得される。

「ちなみに芸人だ」

 こいつは今日は何故か若干アグレッシブではないだろうか。

 マキナの衝撃発言に周囲が凍りついたところで、

「う、うん、そうだな」

「あ、ああ、そうだな」

 意味不明な納得と相槌を打ちながら、クラインがキリトの横の人物に気づく、

「あー! おおおお。お。お。お。お前!? ま、ままま、まさか……!」

「どもりすぎだろ」

 クラインが驚愕している中で、何やら状況に若干流されていたアスナが片手であいさつしながら、

「どうも、≪血盟騎士団≫のアスナです。しばらくキリト君とパーティーを組むことになったからよろしくお願いします」

「キリトォ!!!」

 クラインだけではなく、≪風林火山≫からも怨嗟の声が上がる。凄まじい速度で詰めよりキリトをゆするクラインの姿を見ながら、改めて”日常”という存在の尊さを再認識する。常にそこにあるのに、弱さと断定して拒否した俺だったが、今はどうなんだろう。

 変化と日常を許容して、強くなったというのは、正解だったのだろうか。

 いや、おそらく正しい答えは存在しないのだろうが。

『アキまた考えてる』

 仕方がない。メンタルが豆腐で答えも出せないのに考えてしまう性分なのだ。面倒な男この上ない。

 だけど、今は、

 キリトとアスナ、二人の道に幸が多い事を祈りたい。そう思いながら様子を眺めていたところ、

 新たな侵入者の気配がする。
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| 断頭の剣鬼 | 08:45 | comments:7 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

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| | 2012/08/13 11:31 | |

すごく……一撃必殺です……

| 蒼桜 | 2012/08/13 11:31 | URL |

まさかのマッキースマイル解禁(笑)
ただしベア子案らしいので本家とは違うのだろうか?
黒円卓は今日も今日とてテラカオス(笑)

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/13 12:40 | URL | ≫ EDIT

流石、大隊長は(お笑い的な)格が違った……

つか、バカップル自重しろ

| 装甲悪鬼 | 2012/08/13 13:47 | URL |

凄く(腹に)…一撃必殺です…

| ぜんら | 2012/08/13 14:21 | URL |

一撃必殺…ガクブル

そして、断頭読んで気になりすぎて、PSPの怒りの日かっちゃったぜ☆

| タッツミー | 2012/08/13 21:06 | URL |

マッキーに抱いていた印象が一撃必殺された…!
さすがマッキー、マッキースマイル恐るべし。

| ろくぞー | 2012/08/14 14:28 | URL |















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