陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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第五話 外の世界



 ひたすら地平線の彼方まで続く道路と、それ以外には土と草と、遠くを飛ぶモンスターや木々が見える。RPGで言えば定番の地形だが、『現代』で言えばほぼ確実に見られない光景。モンスターは抜いたとしてもこういう光景はせいぜいドのつく田舎に行かなければ見つかりはしない。そして、なによりも空気が美味しいと玖楼は思う。

「んー、ぁー!」

 体を大きく伸ばしながら空を見上げる。曇り一つない早急には燦々と太陽が輝いており大地を照らしていた。暖かい太陽の光が少し肌寒く感じるのはこの地域の癒しなのだろうとくだらないことを考えながら、ひたすら地平の彼方へと続く道路を歩き続ける。

 それなりに広い道路は、高速道路ほどの大きさではないが、トラックが十分に通ることのできる大きさでありその中央を一人で歩く気分は爽快である。

 残念なことに、旅のお供が居ないことが一番悔やまれることなのだがそれは仕方がない。リッチは成仏しそう、アランは人に見せられない姿、ナベリウスとリタはお仕事、ケルベロスは寂しそうな顔をしてたがたぶんアレは焼肉が食えない寂しさだろう。なによりケルベロスには冥き途勢最弱でありマスコットと言う仕事がある。あれをつれてきたらダメだ。

「さて」

 歩き続けながら前を見る。未だ、地平には目的の場所は見えないが方角も道もあっているはずだ。あと1日、1日半も歩けば到着できるはずだと貰った地図には描かれている。だから目的地を目指して歩く。

「グルゥゥゥ……」

「キェェェ!」

「……」

 空から玖楼の行く手を阻むように三匹の魔物が現れる。それなりに大きい極彩色の怪鳥が2匹と、その足につかまって現れた木の形をした魔物。合計三体。本日数度目のお客。辟易しながらも腰に挿してある剣を抜く。

「さぁて、愛しのサティアに逢うためにも今日も頑張るぜ」

 旅は道連れ世は情け。ただしファンタジーの場合は妨害もあり。そして本人の思考が若干ストーカーよりだと言う事を彼はまだ理解してない。


                   ●


 外 出 許 可 が 出 ま し た 。

 人外三人衆に拾われてから約七ヶ月、初めての外出許可を貰った。と言うのも、元々外に出してもらえなかったのは存在をマリーチに知られないためらしい。なんでもマリーチは性質がかなり酷く、巻き込まれて無事な目にはあえないだとか、かなり評判は悪い。そのため確実にターゲットになりえる自分を冥き途と言う、『天』でも排除ができない強大な力を持った『タルタルロス』って古神の元に居れば、そう簡単にはばれないと思ったそうだ。

 結果ばれたけど。

 自分はマリーちゃんをそこまで悪いとは思わないけどね。良くも悪くも純粋だと思った。

 外に出るにあたって外は冥き途よりもさらに危険だと言われて、それで訓練と言うなのは拷問が激しくなったのはここでは黙っておこう。

 とりあえず、黒川玖楼19歳(冥き途で年を取りました)。この世界初めての外出ゥ!テンションが超アッパー中。

「剣は持った?飛翔の首飾りは?治療の水も持ちましたよね?」

「まるで心配性の姉のようだな」

「そこ、五月蝿いです」

 リタの槍が閃きリッチが壁に半ば陥没する。そしてそのまま俯く。玖楼が現れた事によって一番変化が大きいのはたぶんリタだろう。ナベリウスでさえ過保護になったと、そして同時に最近結構容赦がなくなったと言っている。やはり、外見上は同年代に見える相手が違うのだろうと判断されているが、

「リッチ……」

「いいのだ友よ……いいのだ私はどうせ……どうせ……」

 アランとリッチも友情をしっかりと確かめ合ってたり、冥き途の賑やかさに変わりはない。アランもノリに慣れたのか最近はリッチと共に居ることが多い。言えばナベリウスとリタのコンビ、のような存在だろう。

「えっとタオル……着替え……」

「本当に姉のようなんだが」

「まだまだ未熟で弱いから心配するのは当たり前です」

「あ、そっすか……」

 四次元ポケット並みに何でも入る道具袋にドンドンものがつめ込められてゆき、その中身をリタが一つ一つを確認してゆく。ナベリウスも道具袋の中が気になるのかリタの横でそれを確かめている。

 状況を説明すれば簡単である。

 たった七ヶ月だが、やっと外出の許しを得た玖楼が、一番近い村である北華鏡の集落へと数ヶ月住み込むことに決めた。その理由は本当に簡単なものであり『外も見たい』と言う玖楼の意思からである。

 ……と言うのは建前であり、実際の想いは『サティアにもう一度逢いたい』である。

 この1ヶ月間の間に2~3回ほど来て、その際少し喋ったが、それでも逢うたびにまた逢いたいと思えてくる気持ちがあることを玖楼は感じていた。しかし外へ出られない手前ただ鍛えながら待つことしかできなかったが……その制限も今はない。北華鏡の集落を拠点にしていると言われたのは約半月ほど前。今もまだ集落にいるかどうかは分からないが、それでもやらないで後悔するよりはやって後悔しよう、と言う気持ちが出てくる。

 その結果がこれである。

 現在、北華鏡の集落へと行く当日である中、荷物の最終点検の最中であった。

 リタが満足したのか荷物のチェックを終えると、ナベリウスがどこからか腕輪を取り出し、それを玖楼へと渡す。それはかなりのレアアイテムで、マルウェンの腕輪と言う、装備すると修行による効率を上昇させるアイテムである。

「いなくても……ちゃんと修行……がんばって」

「サボったら今度あったときに鍛えなおします」

 恐怖の発言だった。早速マルウェンの腕輪を装備し、北華鏡の集落の周りにも、冥き途クラスのモンスターが存在することをひたすら祈る。

 リッチも体を壁の中から脱出し、アランと共に玖楼の周りに集まる。

 たった七ヶ月されど七ヶ月。それが現在の玖楼にとっての『全て』である。七ヶ月で玖楼の持つ常識は大きく覆されたと言うべきである。剣を握ることはできるようになった。魔法は使えないが必殺技もできるようになった。ある程度常識を投げ捨てることもできるようになったし、多少グロイ生物でも偏見に囚われずに殴ることもできるようになった。どれもこれも日本で生活していれば絶対にできないことであった。

 冥き途の浅い階層へと一団と共に向かう。冥き途の現在の出入り口は一つしかなく、前サティアが侵入してきたような転送装置のみで、昔はまだまだ何個かあったが今では一番浅い部分にある一つしか稼動していない。その前にまで来ると玖楼が乗り込み、その前で他のメンバーが止まる。

「そんじゃ、ちょいと軽く『普通』ってのを見てくるよ」

「……それは案に私達が普通じゃないって言ってますよね……?」

「あ、いや、でも、……ここ普通じゃないよね?良く考えたら死者と一緒に暮らす生活とかおかしいよね?」

「「「別に?」」」

「いや、私はおかしいと思うぞ」

「一番人外な姿してる少尉には言われたくない」

「ラメ入りペ○シマン……」

 少尉は自分と同様この世界よりかなり科学の発達した世界から来たのは話し合ってすぐに分かり、コカ○ーラや、ペ○シマンの話が分かったときは喜んだものだ。そして同時にラメ入りペ○シマンと表現した時はかなり落ち込まれた。

 そんなアランを放置しつつシュタ、っと片手を上げる。

「そんじゃ行って来ます」

「うむ。行って来るがいい」

「ちゃんとするんですよ?」

「ご飯係…………」

「ナベリウスさんだけ何か違うんですけど」

「気にしちゃだめ」

 まぁ、仕方がないね。料理って文明の行動が焼く半年ほど前まではなかったんだしね。胡椒を手に入れるためだけになんで戦争が起きたのか、今では分かるきがする。ギュンギュスカーに連絡がつくまでは本当に生臭かったり色々と足りなかった。素晴らしいね。調味料。

 くだらないことを考えているうちに転送装置に光が灯り始める。転移の前触れだ。手を振りながら別れを告げる。飛翔の首飾りを使用すれば何時でも戻ってこれるので、もう二度と会えないわけではない。そのためか若干心が軽く感じる。

「あばよダチ公……!」

 その一言共に視界が完全に光に塗りつぶされる。光の中でリタがバイバイと手を振ってるところが見え、リッチとアランがカタカタしているのが見える。リタもしっかり手を振っており、仲間意識はあるんだなと思っているうちに完全に光に染まる。

 それから数秒、

 光に塗りつぶされた光景が元に戻ると。同じなのは筒状の石でできた転送装置。それ以外は青空の下、隠すように装置を囲む木々。まったく別の場所に存在していた。

「眩しっ……」

 目に影がかかるように手を持ち上げていささか眩しすぎると感じる太陽の光をさえぎる。

「あー。今まで地下だったからなぁ……」

 環境がガラッと変わるのも仕方がないと思いつつも手を下げずに歩き始める。サティアの話を聞くかぎり北華鏡の集落から冥き途までは数日かかり、古い街道へと出るまでには約数時間かかると言う話であった。

「たしか道に出るまで真っ直ぐ西だっけ……」

 道具袋の中からコンパスを取り出し、方角を確かめる。この世界は広く、人間が住む場所より魔物の生息しているエリアのほうが大きい。故に、迷えばすぐに餌食になって生きて帰れることはないため、コンパスなどの方角を示す道具はかなり重要である。……とは冒険のいろはを教えたリッチの言。

 歩き出しながら木を見ると、木の枝に紐がくくりつけられているのが数本あるのが分かる。

「これが目印だったから、こっちで大丈夫、っと」

 これも先輩冒険者のサティアがやったことで、森が深そうなところでは景色が似てしまい、ループや迷子にならないように定期的に目印を作るものだが、これを辿ってサティアは冥き途へと、何回かやってきているのである。

「頭いいよなぁ」

 少し足のペースを上げながら木々の間を抜ける。リタに何度も「暗くなる前に開けた場所を見つけて野営の準備をするんですよ」ときつく言われているため、なるべく早く開けた場所を見つける。睡眠中に教われないためにも魔物避けの陣を張る必要もあるため、それなりの準備は必要だとわかっている。

「……うし。行くぜ」

 誰もいない木々を、一人歩き続ける。


                   ●


 そうして道にたどり着いて歩き始めて既に3日が経過している。旅の熟練者のサティアは2日ほどあれば到着できると言っていたが、それは熟練者としての言葉だと改めて思い知らされる。テントの設置に戸惑ったりと、色々と不慣れな行動で早めに野営準備を始めたりと色々と行動が遅いので、本来のスケジュールより遅れての行動であった。なによりも、

 どた、ばた、ずた。

 魔物の存在が一番読めないために、たまに空に飛んだままの鳥型の魔物を打ち落とすのに偉い時間がかかったりする。

 襲ってきた魔物を三体全て切り伏せると道具袋の中から布を取り出し、怪鳥を切ったときに付いた血を剣から拭いながら歩き始める。こういう武器の手入れは冥き途に居るときは必要なかったが、武器を錆びさせる訳にもいかず、こうやって手入れの仕方も習った。

 本当に自分は変わったと、玖楼は思う。自分は元来何かを始めようとする人間じゃなかったはずだし、めんどくさがりやなはずだ。なのに今では一人で冒険して一人で戦えて、そして誰かを追っかけるまでにはハッチャケている。

 変わったなぁ、と。そう呟く玖楼の背後から新たな音が聞こえ始める。パカラパカラと馬の蹄が大地を蹴り、ガタガタと木組みの何かが揺れる音。足の歩みを止めずに後ろを振り返ると、西部劇でみるような馬車を2頭の馬が引っ張る姿があった。馬の手綱を握る男の目が藁帽子のした大きくなるのが見える。此方を見かけると馬車の速度を上げて近寄ってくる。それを見かけて玖楼が体を街道の中央から動かし端の方へと寄る。そのまま玖楼まで追いついた場所が玖楼の横で速度を落とし玖楼に平行するように動く。

「よう!兄さん、冒険者かい?」

 気さくに男が話しかけてくる。麦藁帽子にチュニック、革のズボンにベストと、この時代としては中々の服装からしてそれなりにお金のある身なりだとは分かる。麦藁帽子を脱いで片手に持ちながら玖楼を見てくる男に対して、

「あ、や、はい。そんなもんです」

 村につくまでは誰も会うことがないと安心してたゆえにすこし緊張する。ついでに言葉が通じたことにも安堵する。サティアとの件のあと、言葉はさらに練習した。へぇ、と声を漏らしたあとに辺りを見回し、再び玖楼に視線を戻す。

「つー事は何だ、一人か?」

「えぇ、そうです」

「……うっひゃぁ、そりゃまたすごいなぁ……」

「?」

 なんだか良く分からんが……褒められた? いや、普通に驚かれてるよな。……いやまて、このリアクションからして激しく嫌な予感がする。

「っつー事はなんだ兄さん、さっき見かけた魔物の死骸、あれ兄さんが殺ったのか?」

「そ、そうですけど……」

「人は見かけによらないものだなぁ」

 馬車を動かす男はしきりに頷きながら尊敬の眼差しで玖楼をみる。人生この方尊敬とは縁遠い生活をしていた玖楼はその眼差しを受けてさらに緊張してしまう。まさか知らぬうちに何かをやってしまったのではないか、と。

 その心情を理解できたのか、麦藁帽子の男が笑いながら手を振り、

「あ、いやいやいや悪い悪い。ここらの魔物って結構強くてさ、あんなふうに綺麗に真っ二つになってるところは見たことないから感心しちゃったよ。な乗り遅れたな。ウィル、行商人のウィリアム・バンガナムだ」

「あ、黒川玖楼って言います」

「クロカワ・クロウ? こりゃまた聞いた事のない名前だなぁ。顔立ちも珍しいし、兄さんまさか遠いところからやってきた? もしかして東方とかから?」

 口が裂けてもすぐ近くのあの世からとかはいえないため、適当にごまかしながら答える。玖楼の答えに満足したのかウィルはしきりに頷くと、

「で、兄さんもこの先の村を目指してるんかい」

「そ。先の村でちょいと人探しを」

「ふーん。じゃあ、乗ってけよ」

 顎で馬車の荷台を指しながら言う。それに玖楼が驚く。

「いいのか?」

「いいんだよ。兄さんみたいな強い人がいれば村までの道のりが安全に終わりそうだしな。乗ってけ乗ってけ。」

「悪いな、よっと!」

 小走りで馬車の裏に回ると馬車裏から一気に飛び上がって荷台に乗り込む。荷台の中には少量の荷物と共に男が一人剣を抱えるように座っていた。装飾の凝った鎧を着飾っており、剣にもそれなりの装飾が見える。

「話は此処から聞こえてました。はじめまして、神殿教会の騎士フェヴナンド・ミスカトルです」

 優しそうな顔立ちに短くそろえられた金髪は女の子受けしそうな優男で、それとなく人懐っこそうな雰囲気を出す青年にも見える男だった。

「おっす。黒川玖楼っす。あ、こっち風に言えば玖楼黒川なのかな? ウィルさんもフェヴナンドさんも玖楼って気軽に読んでください」

「では自分も愛称のフェヴでお願いします」

「俺もウィルで十分だ。あと敬語をどうにかしろ。ムズムズするぜ」

「おう、分かったぜウィル」

「対応早いな!」

「自分柔軟に生きてるんで」

 そのあと静寂一瞬、三人で大笑いする。馬車も歩きよりは早いが、それでもまったりとした速度で歩みを続ける。馬車を新鮮な風が駆け抜け頬をなでる。その気持ちよさに笑みを浮かべると、玖楼が質問をフェヴに投げかける。

「そういやフェヴ」

「なんですか?」

「神殿教会ってなぁに」

 ガタ、ドタ、ヒヒーン。馬車が急停止しその衝撃で玖楼とフェヴが馬車の床に倒れこむ。

「わ、悪い。あまりに予想外の質問で手が滑っちまった」

「ご、ごめん。……で、神殿教会ってなんなの?」

 その言葉にフェヴが激しく狼狽し、

「し、神殿教会を知らないんですか?!」

「え、いや、……ハイ」

「……おめぇさん、本当に今まで何処で暮らしてきた? 洞窟の中って言われても俺は驚かないぜ」

 それは間違ってないぞウィル。

 だがリッチから聞いた常識の中には一言も神殿協会については語られていないため、玖楼には神殿協会と言う存在を知る方法はない。フェヴが軽くため息を吐くと説明を始める。

「神殿教会とはマーズテリア様、そして『預言者』様を神として迎え、国境を越えてこの大陸で一番広く知れ渡っている宗教です。我等の教義は弱き者を護り、平和と正義を愛すことにあり、そのために日々鍛錬を続け、世界の平和と魔物の排除のために日夜努力しているのです。騎士や神官戦士を育ててはそれを人手の少ない村や魔物の出やすい町に派遣したりして、多くの人々を守ることにも成功している、素晴らしいものです! 各村や町にある教会の大半は神殿教会の物で、少々お布施を貰う必要はありますがそれと引き換えに、聖水や治療の水、部屋を借りることさえできます。輩出される騎士はどれも強く、神殿教会の騎士と言えばエリート中のエリートです!」

 フェヴが誇らしげに胸を張りながら神殿教会について話す。玖楼が自分でまとめるに、この世界での警察のような存在なのだと納得する。たしかに力の無いものが暮らす小さな村では一匹の魔物が脅威になりえるから、こうやってほぼ無償? で派遣するのはすごいことだと。

 ……あ、お布施を貰ってたっけ。やっぱお金がないと生きていけないのね。

 そんなことを思いつつも、フェヴが自らを『騎士』だと名乗ったことを思い出す。

「ってことはフェヴもエリート中のエリートなのか?」

 そういった瞬間フェヴが若干項垂れる。

「あ、いえ……私はまだ騎士と言っても下っ端、言わば見習いのようなものです。騎士の中にも色々位や上下関係がありまして……その……私はまだ……」

「下から数えたほうが早いのか」

「偉くはっきり言いますね?」

「自分正直に生きてるので」

 そして三人で再び大声を上げて笑いあう。話すのが楽しいのか三人の顔には笑顔が浮かんでいる。

「一応高見えてもレベル50はあるんですけどね」

「レベル50っていやぁ見習い騎士としてはかなりの高レベルじゃねぇか!」

 レベル。レベルの話は赤骨隊長のレベル50のを相手にして以来、まったく話に出てこないので自分が何レベルとか判断する手段はないが、男の子としては自分がどれくらい強いかに興味はある。

「でもクロウもここらの魔物をあんなに綺麗にぶった切れるんだ。そこそこ強いんだろう?」

「いや、まぁ、俺……自分が何レベルとかは知らないんで……」

「へ? そりゃあもったいないぜ! 死骸しか確認してないがアレだけの腕前なんだ、数値にして確認したほうがいいぞ。レベル一つで仕事の報酬とかがかわってくるからな」

「あ、でしたら私が調べましょうか?」

 その言葉に驚く。冥き途でもレベルを調べることが出来るような人間はいなかった。

「え、できるの?」

「はい。本来は教会で神の信託を受けてレベルのお告げを受けるのですが、敬謙な信者になりますと略式ですが信託を受けることができるのですよ。こう見えて私、主席ですから」

 えっへんと、誇らしげに胸を張るフェヴに対する玖楼の印象派情けないエリートから、なんだか便利なエリートにランクアップした。

「おー。そんじゃいっちょ頼むわ。ここらで自分がどれくらい強くなったか調べるのも悪くはないと思う。何気にどれぐらい強くなったか知らないで戦い続けるのってのも結構不安だし」

 そういうと早速と、フェヴが横においてある道具袋から本を一冊取り出す。装飾の施された若干古そうな本であり、大事に扱われているのが分かる物である。それに視線を合わせていると、

「あ、これは聖典です。まだまだ未熟なので媒体がないと少し大変でして。
あ、お手をお借りしますね」

「あ、どぞ」

 玖楼の片手を掴むともう片手を聖典に乗せて、ブツブツと呪文を唱えるように喋る。傍からみれば完全に関わりたくない危ない人間一直線なのだろうが事情を知っているだけ、離れることは許されないため、諦めて大人しくする。

 手をつないでから数秒後、フェヴが驚いたような表情を見せて、

「す、すごいですよ!レベル71なんてすごいです!」

「ひゃあ、こりゃまたすごいなぁ!」

 未だレベルのすごさを理解できず、玖楼頭をかしげる。

「……そんなのすごいの?」

「70と言ったら一流の冒険者クラスの強さですよ! 他にも神殿教会でも中堅クラスの騎士の実力はありますよ! ここら一体の魔物でしたら問題なく無双できるほどですよ!」

 まさかそこまでとは思わなかった。実際冥き途にいる間は自分の数倍の強さを持った人外しか存在しなかったため、玖楼の強さの基準というものがどれだけ狂っていたか気づく。そしてまた、外に出てよかったとも考える。

「ちなみに150で超一流、220になれば英雄などといわれる人々、
神格保持者が250、それ以上は魔人や人を超えた、私達のような存在が届かない領域の存在ですよ」

 ナベリウスさんとリタの強さに今更ながら絶望した。伝説クラスの門番ってなんなんだあんたら。リッチとアランも此処数ヶ月で強くなってたしなんなんだあんたら。マジでなんなんだ。

 その後も、フェヴ、ウィル、玖楼の三人での雑談は続く。玖楼の初めてのたびであり、リッチが教えたこと以外にも知るべき事は多くある。そのため、玖楼は貪欲に知識を欲した。

 結局、馬車が北華鏡の集落に到着するのは暗くなってからであった。


                   ●


 ガタゴトガタゴトパカラパカラパカラ……。馬の蹄の音と揺れる馬車の音が静かに夜の闇に響く。先ほどまではランプの炎と月の光を除いては完全に真っ暗だった世界も、今では村の明かりである程度の明るさを保っていた。

 ゆっくりとすすんでいた馬車がカタ、と音を立てて停止する。村の入り口に到着したのだ。村の入り口に警備兵などおらず、簡単な柵しか置かれてないために、その間を通ることで入った事になる。大きな町のような面倒なルールは存在しない。

「到着したぜお二人さんよ」

「助かったぜウィル」

「此処まで運んで下さりありがとう御座いました」

 玖楼に続いてフェヴが馬車から降りる。辺りを見渡すと家から明かりが見え、他の家より大きな建築物が二つほど見える。

「お前さんたち二人はどうするんだい?」

「私は教会への報告義務があるのでこのまま教会へ行きます。寝泊りも教会でできますので」

「俺は……宿かなぁ」

 RPGでよく出てくる宿屋はリアルに存在し、かなり安い値段で一晩借りれるそうなので、今日はもう遅いので宿に止まって眠っちまおう、と言うのは玖楼の考えである。

「宿ならすぐそこにあるぜ。教会は村の奥、こっから見て右側だ。俺も世話になってる農家に挨拶したら宿に行くから、またあとであえるかもな」

 カタカタお音を立てながら馬車が動き出す。

「それでは私も。しばらくこの村にいると言うのならまた明日にでも逢えるでしょう。では、おやすみなさい」

 フェヴも一度頭を下げてから教会のほうへと去ってゆく。玖楼も一人でボーっとしているわけにもいかず、ウィルに教えられた宿の方向へと向かう。宿自体は見える範囲にあるのでそう遠くはない。木で出来た2階建ての大きな建物、と言うイメージだ。中世ベースのRPGにでてきそうだなぁ、と言うのが玖楼の率直な意見だった。

 小さな声で失礼しますと言いながらドアを押し開ける。宿の1階はまるで酒場かレストランを思わせる様子で、奥のカウンターに店主と思わしき男が見える。他にも意外と酒場自体はにぎわっており、冒険者姿の男もいれば、酒を飲みに来た軽い服装の村人も見える。ドアが開いたことを見て一瞬玖楼へと視線が行くが、一瞬見ただけであり、ただそれだけだ。それ以上の興味はない。

 玖楼の服装は最初と変わらぬドレスシャツとジーンズだが、その上から旅人が着るようなマントを装備して首から下をすっぽり隠しているため、早々目に留まるような格好ではないのだ。しいて言えば顔立ちぐらいなものだろう。

 意外と賑わっている酒場部分を抜けてカウンターへと到着する。ヒゲを生やした、いかにも『俺がボスだ』っぽい店主の元へ行くとさっそく声をかける。

「おういらっしゃい。こんな時間まで冒険か? それとも仕事か? 見ない顔だな」

「あ、はじめまして。自分たった今到着したばかりなんですけど、しばらく此処に泊まりたいんですが部屋を一つ借りれませんか?」

「了解。ちょいとまってな」

 ヒゲ面の店主がカウンターの下に手を伸ばすと紙の束を取り出す。その紙を一枚一枚めくりながら確かめてゆくと、最後のページで顔をしかめる。

「あー……部屋……空いてません?」

「すまんな兄ちゃん。実は今日来るやつが一人いてな、そいつのために部屋を一つとってあるんだがそのために今ある部屋は全部埋まっちまってるんだ。つっても此処みたいな田舎の宿には全部で4部屋ぐらいしかねぇんだがな。悪ぃな」

 困った風に店主が頭をかく。玖楼の表情にも困ったと言う色が浮かぶ。

「あー、どうすりゃいいんだろ。村のどっかで野宿かなぁ……」

 できれば全力で回避したい結末ではある。店主の前で頭を抱えだす玖楼に予想外のところから援護射撃が入る。

「それじゃ、私と相部屋でいいわよ」

「え?」

 後ろに振り返るとそこには笑顔で玖楼を見る赤髪の女性がいた。

「え、え、えぇ?」

 まさかこんな風に逢うとは予想もせず、混乱しだす玖楼に対して玖楼の後ろで店主が口笛を吹き、やるな兄ちゃん、と言うがそれを玖楼が全力で無視する。

「さささ、さ、サティアさん?!」

「さんはいらないって前言ったはずよ。ふふ」

 玖楼の狼狽っぷりが面白いのか、くす、っと可愛い笑いをサティアがこぼす。くすくす笑うサティアを見て落ち着いたのか、玖楼が若干呆れた感じにため息を吐きながら、

「からかったな?」

「いえ、本気よ?」

「え?」

 そして完全にフリーズした。玖楼には理解できなかった。

「それでいいのかい姉ちゃん?」

「私は玖楼の事嫌いじゃないし、まったく問題ないわ」

「そうかい。料金は……あー、兄ちゃん? おーい。ダメだこりゃ。頭から煙ふいてやがる。料金に関しては気にするな。朝食の時間も変わらねぇから、明日の朝に払ってくれればいいぜ」

「ありがとう。玖楼?」

「へい。どういうことだぜこれはステイステイ。これなんてエロゲ? 違うだろ落ち着け俺。夢、ドリーム。そうさ。夢なんだ。こんな美女と同じ部屋で眠れるとか夢に違いないだろ常識的に。テンション上がって来たァー! って状況じゃない!いい加減に夢なら覚めろ! いや、その前に落ち着くんだ玖楼! こういうときこそ……計算だ! 数学の成績が壊滅的だった俺が数学の問題をやればすぐに落ち着くはず!12683+94621は……って、数字がなんだったか覚えてねぇ!! ダメだ! 余計に混乱し始めた!」

 玖楼の脳は限界に近づいていた。

「何かブツブツ言ってるわね?」

「……姉ちゃん。悪いことは言わない。そいつ置いていけ」

「これはこれで可愛いと思うわよ?」

「……もう俺は何も言わないぜ」

「ふふ、ありがとう。それじゃ行くわよ玖楼?」

 未だに軽いトリップ状態の玖楼は返事をせず、サティアが玖楼の腕に自分の腕を通し、玖楼を引きずる様に2階へと上がってゆく。宿の1階部分、酒場にいる村人はやるなぁ、若いなぁ、等とコメントを出し合いながらも全員そろって、

「へたれか」

「へたれだな」

 その共通認識を持つようになった。

 そして結局、玖楼は次の日の朝まで一睡する事無く過ごした。


                   ●


「あははは、あははははははははは!!! ナニアレ! さ、流石私の友達を名乗るだけはあるわね! ここ数日つまらないと思ったら最後の最後でアレって! あは、あはははははははは!!! あーやだ、面白すぎて腹が痛い! だ、ダメ! 笑い死ぬ! あははははははははは!!」

「笑うのもいいですが書類仕事を他人に全て押し付けないでください」

「あははははは、ははは、はぁ、悪いわね。でも……まだまだね。この程度じゃダメよ。私の友達を名乗るならもっと喜劇で悲劇で、強くなきゃダメよ。そうね。少しお節介をしようかしら。そう、どんな料理にもスパイスは必要ね」

「……マリーチ? 今がどれだけ大事な時期だかわかっているのですか?」

「だからこそよ。だからこそ責任の一端を彼に持たせるのよ」

「『持たせる』ですか」

「そう。だって、―――私達『トモダチ』でしょ?うふうふ。クスクス」


名前:黒川玖楼
レベル:71
称号:旅する異邦人
主武器:パラディウム
予備1:なし
予備2:なし
防具:
ドレスシャツ(魔導皮膜処置)
ダメージジーンズ(魔導皮膜処置)
旅人の衣(魔導皮膜処置)
装備:マルウェンの腕輪
戦闘スキル:
必殺・飛燕―――RankE
必殺・我流―――RankD
中型剣  ―――RankD

状態:混乱2

HP:380/380
MP:0/0
TP:64/64
FS:50/100
攻撃力:193
攻撃回数:5
防御力:108
防御回数:15
魔法攻撃:0
魔法防御:98
肉体速度:20
精神速度:9
攻撃属性:万能
防御属性:万能

発動スキル:
努力家Ⅳ―――迷宮時は1歩毎に経験値獲得。戦闘時は獲得経験値が上昇する。
見切りⅠ―――攻撃を受ける際に、確率で発動。敵の攻撃を完全回避する。
先手Ⅰ ―――戦闘開始時に確率で発動。開始時の硬直フレームを0にする。
サティアが好き―――戦闘メンバーに『サティア』がいる場合、攻撃力と防御力が5%上昇する。


名前:フェヴナンド・ミスカトル
レベル:50
称号:神殿教会の見習い騎士
主武器:祝福済みロングソード
予備1:なし
予備2:なし
防具:神殿騎士の鎧
盾:神殿騎士の盾
装備:聖典
戦闘スキル:
魔術・神聖―――RankD
魔術・治癒―――RankD
中型剣  ―――RankD

HP:352/352
MP:80/80
TP:30/30
FS:50/100
攻撃力:133
攻撃回数:3
防御力:87
防御回数:10
魔法攻撃:74
魔法防御:81
肉体速度:13
精神速度:12
攻撃属性:神聖
防御属性:神聖+

発動スキル:
神聖の守護者Ⅰ―――防具の属性に左右されず、常に『神聖+』の防御属性になる。
復活Ⅰ―――戦闘不能になった際に、確率で発動。HP&FSが一定の状態で復活する。
連携Ⅰ―――味方の攻撃に続けて攻撃すると、ダメージが増加する。
悪魔殺しⅠ―――敵が『暗黒』属性の場合、攻撃力が上昇する。
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