陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

2012年08月 | ARCHIVE-SELECT | 2012年10月

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妖精郷 ―――ラスト・スタンド

推奨BGM:Thrud Walkure


 ヒースクリフと共にオベイロンを挟み込むように立ち、

「リリース―――」

「―――リコレクション」

 同時に心意の光を解放する。俺が解放するのは羅刹の記憶ではなく、自分自身に眠る記憶。情報。蓄積された思い、秘めた記録。解放されたものは体を改変し、最も親しみのある姿へと変わる。逆立っていた髪は落ち着き、背も少々高くなり、顔も子供らしかったのが少し落ち着いた様子に―――スプリガンのキリトから黒の剣士キリトへと姿が回帰する。全身に心意の光を纏いながら、更に想いを解放してゆく。全身を覆うその光に指向性を、概念を付与し、

 ヒースクリフと同時に攻撃を叩き込む。完全に音を置き去りにし攻撃が音そのものを砕きながら進むため、オベイロンに直撃するその瞬間まで全くの無音で強襲した。今までよりも力が込められた一撃はオベイロンに命中し、激しい火花を散らす。顔に広がっている罅に一撃を入れられたオベイロンは―――全くの無傷だった。

「くくく……」

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| 断頭の剣鬼 | 10:44 | comments:12 | trackbacks:0 | TOP↑

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DAY6

 訓練場、練兵場だと思っていた場所は大きな闘技場の姿をしていた。ぐるりと中央のリングを囲むように存在する客席は既に観客で賑わっており、興奮した様子で集まっていた。もはやなんと言っていいかわからず、練兵場の入り口で軽く硬直していると、心配してきた入り口の兵士が話しかけてくる。

「どうした? 調子が悪いのか?」

「え、いや、人……」

「ん? これは国営放送されてるぞ? ……まさか知らなかった? おかしいな。試験日程と共に知らされるはずだし、毎年放送してるぞ」

 父と母め、裏切りやがったな。というかアレは隠していたのだろうか。だとしたら嫌な仕込みだとしか言えない。未だに硬直の続く此方の背中を強く叩いてくる。

「まあ、気にすんな! 騎士目指すのならそのうち慣れる事さ!」

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| 短編 | 14:42 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

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妖精郷 ―――リバーツ

推奨BGM:Ewige Wiederkunft
*1推奨BGM:Walhall


「で」

「で?」

「いや」

 視線を受け止めるツァラトゥストラは涼しい顔でそれを受け流す。明らかに話があるのは彼で、俺じゃない。だから、ツァラトゥストラに視線で先を促す。だがツァラトゥストラは何も言わない。そう、何も、最初は俺が何かを言うべきだという風に黙っている。しばし男二人で黙って向かい合う。が、

「ふぅ……」

 先に溜息を吐くのは俺だ。

 あぁ、そうだ。白状しよう。

「解った、解ったよ。そりゃあ後悔してないなんて嘘だよ。後悔なんて腐るほどあるさ」

「だろうな」

 その言葉にツァラトゥストラが苦笑する。他人には安易に同感や同情などして欲しくないが―――この男の場合であれば話は違う。そう、この男だけは俺の完全な理解者であり、また俺自身だ。過去の、という言葉がそこに入るが。

「俺の時もそうだったからな」

「だよなぁ……」

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| 断頭の剣鬼 | 10:14 | comments:10 | trackbacks:0 | TOP↑

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妖精郷 ―――リターン・オブ・ザ・キング

推奨BGM:Ewige Wiederkunft
*1推奨BGM:Götterdämmerung


背中を合わせ座っている。

 この虚無の闇の中に存在しているのは俺ともう一人、この男だけだ。

 いや、この男と表現するのはおかしいだろう。こいつも実際は”俺”なのだから。そう、ここは俺の中でここでは”俺”しか存在できない。だからやつは”俺で”であり俺以外であることはありえない。この認識はくだらない言葉遊びのようで、実に的を射ている。だからこいつは俺だ。

「タバコ、吸うか?」

 発掘したタバコの箱を振り返らず、闇に座り込んだまま後ろに向ける。だがやつは手を振る。

「いらね。んなクソマズイもん寄越すなよ」

「だよな」

 俺が嫌いなのにこいつが吸うわけがない。もうこのタバコは必要ない。投げ捨てる。闇の中へ落ちてゆくタバコの箱はどこかにぶつかる事もなく、永遠に闇の中へと落ち続けて行く。その行方に興味はわかない。その運命はいずれ俺が辿るべき運命で、それはそう遠くない先の出来事だ。

「で」

「で?」

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| 断頭の剣鬼 | 10:39 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

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妖精郷 ―――フェアリテイル

推奨BGM:Ewige Wiederkunft
*1推奨BGM:Bottomless Pit
*2推奨BGM:Götterdämmerung


闇だ。

 無限に闇が広がっている。

 右も左も上も下も前も後ろも。

 闇が広がっている。

 ただただ無限に闇が広がっている。方向の感覚など存在しない。いや、そんなものは必要ない。ここにあるのは闇だけだから。ここに沈むという事は一つの意味しか持たず、そしてそれ以上の意味は必要としないから。孤独に闇の世界で立ち尽くし、周りを見る。そして呟く言葉は、

「まだか」

 まだ、俺は死んでいないのか。

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| 断頭の剣鬼 | 09:21 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑

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妖精郷 ―――バッド・ポイズン

推奨BGM:Unus Mundus
*1推奨BGM:Thrud Walkure


 しばし、司狼と共に無言の時間を過ごす。何も口にすることができない。今、この瞬間に言った言葉は何よりも陳腐に感じられそうで、明広に関して語る事を止めていた。ただ、此処には偉大な男が一人いたのだと、胸に、魂にそう刻む以外にはないと、無言のまま同じ意見を持つ。ただそれも長くは続かない。十数秒無言で黙祷したところで、司狼が立ち上がる。

「やる事できたわ。ま、頑張れや」

 そう伝えて司狼はこの世界から去った。あっさりと、何の未練も残すことなくALOから去った。

 この広く、寂しくなってしまった街に残ったのは俺一人だけだった。街の姿を残さないアルンを一度だけ眺める。その様子をユイも眺め、

「寂しい光景ですね」

「……そうだな」

 だが、この状況に明広を追い込んだのは―――俺かもしれない。

 俺が感染さえしていなければ―――。

「パパ?」

「ううん、いや。それは違うよな」

 誰もが全力で動き、生み出したこの結果を俺のせいだと喚いてしまうのは間違っている。すくなくとも明広の頑張りを”その程度”の事にしてしまう。それだけは許せない。誰も、アイツの命を賭けた行動を否定なんかさせやしない。この件に関して無駄だったとか、成功だったとか、それを語っていいのはアイツだけだ。だから、

「悪いユイ。ママを助けに行こうか?」

「ハイ!」

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| 断頭の剣鬼 | 09:55 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

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覚悟 ―――フレンド・シップ

推奨BGM:Omnia Vanitas
*1推奨BGM:Disce libens


「司狼ォ―――!!」

「明広ォ―――!!」

 そんな叫び声が無人の、灰塵と化した街に響く。もはや栄華を誇っていたアルンの姿はない。存在するのは焼け野原、そして無傷の世界樹のみ。その元の姿を知っているものがあれば来る場所を間違えたのではないかと疑う程にその変貌は凄まじい。その事態を引き起こした本人は痛々しい体を引きずる様に前へ踏み出し、拳を突き出していた。それは先ほど戦っていた時と比べ確実に威力が落ちている。今まで別次元に到達していた強さはもはや薄れていくのみだった。だがそれでもその拳は人間一人砕くには十分すぎる力を持っている。黒円卓の戦士、ベイ並の破壊力を持った拳を、

 司狼は顔面で受け切り、明広の着る軍服の胸倉をつかみながら殴り返していた。本来なら砕け散るだけの威力を持った拳は司狼には通じるが、司狼を絶命させることは叶わない。司狼は自滅因子。明広に残された絶対不変の自滅因子。こればかりは絶対に切り離せない最後の絆。故に明広が司狼と同等の強さまで落ち、司狼は明広と同等の強さまで強化を受ける。この二人はどこまで行っても対等で、対等でしかないからこそ互いに滅ぼし合う。そこに優劣が生まれる事はなく、二人は対等のままに殺し合って、滅ぼし合う。それが自滅因子に許された運命であり、その最後だ。

 だから司狼と、そして明広の殴り合いは一方的な展開にはならない。

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| 断頭の剣鬼 | 09:28 | comments:7 | trackbacks:0 | TOP↑

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覚悟 ―――キャンサー

推奨BGM:Juggernaut


 停滞を破るのと同時に刃根が生き物の様にうねり、此方の命を奪い取ろうと動く。その一枚一枚が触れた物すべてを停止させる力を持っている。それがまともに体に触れてしまえばその瞬間、体は永遠に停止してしまう。星の動きすら止めてしまう祈りはたとえその力と記憶の大部分が消え去ろうとも、それでもあるべき場所へと辿り着き、絶大な力を証明する。

 故にその一閃一閃は回避しなくてはならない必殺である。

 だが同時に、時間という存在はギロチンの前では常に停止している。触れている時間は停止し、自分のみが動いていられる。故にその刃は不可避の現実として襲いかかり、

「オォオオ―――アアアァ―――!!」

 斬撃を叩きつける以外に迎撃の方法が存在しなくなる。

 剣とギロチンがぶつかり合うのと同時に刃に体を映し、停滞を切り裂く。神業としか表現のできないそれは精密な精神コントロール、そしてかつてない心意の発現により発生している。状況は薄氷の上を踊りながら進んでいるようなもので、それがこの先あっさりと崩れるのは目に見えている。だがそれでも、この停滞を受けて戦えるものは俺しか存在せず、故に俺以外が前に立つ事は許されない。

「力を!」

「力を? 力を求めてどうする」

「お前を正気に戻すんだよ!」

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| 断頭の剣鬼 | 10:04 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

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覚悟 ―――クライ・ハイ

推奨BGM:Sol lucet omnibus
*1推奨BGM:Juggernaut


 ―――馬鹿騒ぎ。

 そうだ。これは馬鹿騒ぎだ。アインクラッドの終焉から引きずり続けている馬鹿騒ぎだ。アインクラッドの悪夢の続きだ。ここまで近づいてしまえば嫌でも理解できてしまう。

 あの世界樹には多くの人間が囚われている。

 快楽に魘されている人間、苦痛に喘いでいる人間、無慈悲に全てを奪われた人間、ありとあらゆる感情や感覚がドロドロと渦巻いている。そしてその中心で一際輝く、何にも染まらない輝きと―――求めていたものを感じる。あぁ、二つとも知っている。アスナ、そして―――

「明広君。それじゃあ私たちはこれで下がるわよ」

「ご苦労だったリザ、玲愛。下がっていろ」

 久方ぶりに聞く青年の声には、抑え込まれた怨嗟と怒気が凄まじいレベルで混ぜ込まれていた。それは目の前の男が―――明広がその一切を体から漏らさないからこそ周囲に影響がないのであり、自制をやめた瞬間、全てを飲み込む悪意となって意識を塗りつぶすに違いない。それは一切漏れていないのに、こんなにも強く感じられる憎悪は凄まじく、そして痛々しい。

 リザが明広の前に立ち、その顔に手を伸ばす。その顔を覆っていたマスクをゆっくり外すと、マスクが消える。

「頑張りなさい」

 それだけを告げ、リザは消える。そして、

「―――貴方の勝利を、心の底から祈っている」

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| 断頭の剣鬼 | 10:20 | comments:15 | trackbacks:0 | TOP↑

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殉教 ―――ウィー・ディサイド

推奨BGM:Nacht der langen Messer
*1推奨BGM:Juggernaut


「スグ! アレク!」

 戒めが消えて四人が帰ってくる。帰ってきた瞬間に駆け出し近寄る。正樹とリーファ―――いや、直葉の体に傷はない。素早く駆け寄ったところで心配ではあるが、同時にかなり気まずい事に気づく。

 ……どんな顔をすればいいんだよ。

 今までリーファには自分の妹であり直葉だと知らずに接してきてしまった。これ、正直言ってかなりヤバイ状況じゃないのかとは思うが、予想とは変わって直葉は笑顔で迎えてくれた。

「私は大丈夫だよ”キリト”」

 予想外に大人びた直葉の笑顔に一瞬ドキリとする、直葉ってこんなに大人びた少女だったか、と一瞬考えてしまうが―――別段成長は珍しい事ではない。特に極限の状態に追い込まれた人間というのは予想外の成長を見せる。だから直葉が成長を得ていても別段珍しくないかもしれない。しかし、今まで冒険してきた相手が妹だと知れた瞬間、少しだけやりにくいものがある。逃げるように正樹へと視線を向ける。

「アレク、大丈夫か?」

 正樹の方は直葉と打って変わって顔を俯かせ、何やら深刻な表情を浮かべ、そして唇を強く噛んでいる。

「……正樹?」

「ん……」

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| 断頭の剣鬼 | 11:19 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

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DAY5

 場所は城の裏から変わり、城内へと移っていた。それも城内の練兵場―――つまりは戦闘のできる場所。その横に存在する休憩室の中で順番を呼ばれるまで待機していろと命令されたために、順番が回ってくるまでは休憩室……いや、この控室で待機する事となった。流石戦争業が盛んなガレットというべきか、高いレベルで清潔さが保たれ、道具揃えられている……気がする。この時代のレベルの基準をよく把握できていないのが本音だ。ガレットから出た事もない為、他の国のレベルもよく解らない。ただ戦争をよくしかけて儲けてる脳筋国家だという事は理解している。

 どう足掻いても脳筋。

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殉教 ―――フェイク・ドリーム

推奨BGM:Burlesque
*1推奨BGM:Noli me Tangere
*2推奨BGM:Walhall


「―――」

 ……体を揺らされる。眠っていた意識が少しずつだが覚醒して行く。少しずつ覚醒するのと同時に今の自分の状況を理解し始める。

「―――」

 えーと、

 たしかアルンに皆で到着して、そしてそこで待ち構えていた敵と遭遇して、それで……どうしたんだっけ?

 ……いやいや、敵とか皆とか誰よ。あとアルンってなによ。

「ちょっと! 直葉!」

「……ふぁ?」

 視線を持ち上げるとそこには見知った友人の顔があった。気づけば机に突っ伏す様に倒れた自分と、少しだけ涎を垂らした跡のある机が見える。そこで考える。今がどんな状況かを。まあ、一つしか考えられることはない。

「また寝ちゃった……」

「直葉、剣道の大会が近いからってまた授業で寝ちゃ駄目でしょ……」

「ごめんごめん」

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| 断頭の剣鬼 | 10:18 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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殉教 ―――クエシチョニング

推奨BGM:Schutz Staffe
*1推奨BGM:”Lohengrin”


 完全に仲間が人質にとられているこの状況で、俺は―――トリファを見ていた。

 こんなことをする人物じゃなかったはずだ。

 気の弱い神父。それが自分の知っているトリファだった。最後に教会で話した時もそうだった。いつも通り、気弱だけど優しい神父がいたのだ。だから螢にトリファがグルだと言われても最初は信じられなかったが―――こうなってしまっては、もう信じるしかない。

「トリファ、さん……」

「はい、私です正樹君」

 トリファの笑みも表情も姿も現実で見るそれと変わらない。そう、何も変わらないのだ。状況と居場所が変わっているのに、それ以外の全てが変わっていない。トリファの接し方もいつもと同じで、”普段の正樹”に対するものだ。。だからこそそこに敵意はない。そこまでは理解できた。

 だが、やはり―――

「トリファさん、何故貴方が―――」

「―――何故貴方が明広君を見捨てるようなことをするか、と言いたいのでしょうね。えぇ、私には貴方がそう言う気持ちが痛い程にわかります。えぇ、これでもかと思う程に解ってしまいます。ですから、少々お話をしましょう」

「そこらへんはよろしく頼んだわクリストフ。私説明とか面倒だし」

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| 断頭の剣鬼 | 08:17 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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DAY4

 朝一に王都の中央に聳えたつ城へと向かう。美しく出来上がっている城は芸術の様で、他国にも誇る事の出来る立派なものだ。だが特筆すべきなのはその点ではなく、この城こそがエリートコースに挑むうえでの暮らす場所だという事だ。というのも、騎士になる、その道に入るという事は必然的に将来は領主の為に、城で寝食を同僚たちと共にしながら戦争に備え、腕を磨くという事になる。

 ガレットは中々好戦的な国で、その利益を戦争により稼いでいる。戦争をする場合にちゃんと利益を計算し、採算がとれるように計算してから行っている所が賢い。故に騎士や兵士、そう言った人材を育てる事に関しては少し進んでいる。というよりも門が広いと言うべきか。ガレットのシステムは簡単で、現代のシステムで言う受験の様な事をやっている。入学届をだし、当日に城へと行く。そこで騎士なら騎士用の幼年学校の試験を受ける。これに合格すれば従騎士となる事が出来る。従騎士となれば寝食を城で過ごし、先に入学した先輩たちに礼儀作法を教わりながら訓練を積み、騎士を目指すのだ。

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| 短編 | 11:32 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

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殉教 ―――ニア・ジ・エンド

推奨BGM:Nacht der langen Messer
*1推奨BGM:Cathedrale


「よっと」

 軽い助走をつけてからジャンプする。十数メートルの距離を一息に跳躍し、着地する。不安定な足場は着地するだけで軽く軋み、そして揺れる。

「ちょ、ちょっと!」

「大丈夫、大丈夫」

「パパ! 次はもっと遠くへ跳びましょう!」

「ユイちゃんやめて!」

 首に手を回して背中に張り付くリーファは必死だ。それとは対照的にユイはこの状況を楽しんでいる。ユイはどうやらセンスや感覚的には俺に似て育っているようだ。それは―――実に将来が心配だ。さて、そろそろアスナを救出した後での家族会議を覚悟しなければならないようだ。

「よっ」

「ほい」

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| 断頭の剣鬼 | 09:52 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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殉教 ―――アルベド

推奨BGM:Einherjar Nigredo
*1推奨BGM:Einherjar Albedo
*2推奨BGM:Nacht der langen Messer


 終焉が迫る。避けられはしない。防御もできない。それは絶対不可避の即死を意味する必殺の拳。それを回避する方法も防御する方法も、この世界にも現実世界にも存在しない。故にこの拳は真の意味で必殺だ。触れれば絶対に死ぬ。しかもその能力には一切の制限が存在しない。致死性で言えば今まで見て来たもので最強を誇り―――この一撃が”あの”戦いに存在していれば、たった一撃で全てに決着がついていたに違いない。

 こんな事態を引き起こさずに。

 だがそれも今更な話であり、同時に現実逃避でしかない。しっかりと現実を認識し、この状況を打破する能力が必要だが―――

 ―――見えない……!

 勝利する方法はなく、既知感すらない。解らない。完全に足が止まり、体も硬直している。いや、光よりも早くミハエルが攻撃しているだけだ。相手が加速したのであればそれよりも早く動き、攻撃を叩き込めばいい。そんなシンプルで幼稚な発想をミハエルは迷うことなく、そして苦も無く実行していた。戦士としての理想形が目の前にいる。その存在に純粋な憧れを抱き、同じくらい恐怖する。

 それが完全な終焉だと、どうしようもなく理解できてしまうから。

 故に―――

 ―――何時の間にか自分と拳の間に剣が挟まっていた。

 ……は?

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| 断頭の剣鬼 | 08:49 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

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DAY3

「サイアス」

「はい?」

 家の中、定位置である座布団の上でブラシを使い尻尾の手入れをする。ファッションが江戸時代のこの街の中では、こういった小さなおしゃれが元現代人としての嗜みだと把握している。最初はぼさぼさの尻尾を見ていてそれが気に入らなくて始めたものだが、こうやって毎日綺麗にブラッシングしているとクセになる。

 まぁ、それもけものだまになる度に台無しにされるのだが。

 あのワルガキ共、俺を引っ張れないとなるとすぐに襲い掛かるからなぁ……。

 最近、あそびに誘うときは俺をけものだまにしてからそれを拉致ればいいという考えが広まりつつあるらしい。というか広まった。そのため最近、けものだまにされる回数が劇的に増えた気がする。遊ぶのは別に構わないが、時間と場所があると思うのだ。とりあえず読み書きの時間に押しかけるのはやめるべきだと思うが。

 さて、

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| 短編 | 18:59 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

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EXTRA-7

 ―――決戦の日。

 マイルームから出ながら自分の状態を確認する。体操服に着替えたし、鳳凰のマフラーも装備した。うむ。体操服にマフラーとモノクル、そして刀とは中々変態的なルックだが礼装としては今、自分が持っているもので一番いいものだから仕方がない。セイバーも両手でサムズアップをしてきた格好だ。後で顔を殴ってやろう。もちろんマウントでだ。

『マスターもだいぶ野蛮になってきたな……』

 大体セイバーのせいでしょ。

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| 短編 | 11:23 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

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殉教 ―――ニグレド

推奨BGM:Unus Mundus
*1推奨BGM:Einherjar Nigredo


 ―――では。

 自滅因子とは、さて、なんでございましょうか。

 ”貴女”はその意味を解っていらっしゃるだろうか。あぁ、解らぬだろう。知らなければ理解する事は出来ない。故に私が僭越ながらお教えして差し上げましょう。

 それは、癌細胞である。

 永遠は存在しない。どんなに不死を、永遠を望もうと、それはありえないのだ。人に与えられた絶対。そして生物として生まれた以上、絶対不可避の唯一の現象なのだと理解していただきたい。どんなに肉体が人を、理を超越しても―――求めてしまうのだよ。終わりを、魂が終焉を願っている。それは肉体的な永遠を得たとしても避けられない必然。えぇ、それこそ私ですら避けられないものなのですよ。

 マルグリットよ。

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| 断頭の剣鬼 | 09:25 | comments:7 | trackbacks:0 | TOP↑

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殉教 ―――アポトーシス

水晶BGM:Einherjar Nigredo


「Out of the pan, in the fire」

 司狼が英語で、何やらかっこつけた事を言う。だから問う。

「その意味は?」

「一難去ってまた一難」

 なるほど―――この状況を説明するにはふさわしすぎる言葉だ。そう、去ったと思ってまた遭遇。本当に全て予測されている。いや、予知されていると言っても過言ではない。

「待っていたぞ」

 そこには、

 鋼鉄の死神がいた。


                           ◆

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| 断頭の剣鬼 | 10:29 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

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DAY2

 フロニャルド・ガレット獅子団領東洋街へと転生を果たしてから早五年。

 これ、既知感脱却した? と少し疑いつつ深く考えている昨今。幼年学校への入学が決まってくるこの年頃だが、流石にフロニャルドの言葉を全く読めない事に危機感を覚え、父と母に文字の読み書きを教えてもらう今日この頃。五歳ともなるとそろそろ家の外に出しても安全な年齢であり、親も外へ出るように結構プッシュしてくるようになる。

 が、冗談ではない。

 大人しくしようものならよってたかって暴れまくるリトル獣達は、手が付けられないほどにヤンチャでどうにもならない。その事に既知感を感じると言えば感じる、が、それでもやるべきことは別にあって、そのためにも読み書きは必要だ。

 五歳になって、街を自由に歩けるようになった俺は―――マリィを探した。欠片だけでもいいからと東洋街の中を隅から隅まで歩き回り、気配を見つけ出そうと躍起になった。結果としてはそれは無駄で、マリィがこの世界の別の場所に転生しているのだと判断する。決して、転生してないなどとは考えたくない。

 読み書きは生きる上では必須の技能だ。既に新聞は存在するようで、本も見かけている。テレビを見ればわかるが、情報伝達の手段がこの世界は発達している。基本的に知識を収集できるための手段は多く欲しい。それが彼女を見つけるための方法になるかもしれない。しれないのだが、

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EXTRA-6

 6日目。

 慎二はアホだ(断定)。

 もうワカメでいいと思う。

 5日目はアリーナへ入れない様にハッキングし、アリーナの入り口を封印するまでは……別によくもなかった。既にトリガーコードは入手済みで、アリーナへはレベルアップや戦闘経験を積む以外の理由では、入る必要はなかったからだ。とはいえ経験は必須だからもちろん入るつもりだったのだが―――アリーナの入り口は共通だ。

 そう、全てのマスターにとって共通なのだ。

 慎二は私の邪魔をしたつもりで、セラフでの聖杯戦争の参加者全員の邪魔をしていたのだ。

 すぐさま文句を言われる慎二。

 周りから罵倒される慎二。

 一瞬で普通の状態に戻されてしまう慎二。

 激しく落ち込んでライダーに慰められるワカメ。

 あのワカメは何をしたかったのだろうと悩みながら5日目は終了した。

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殉教 ―――エインヘリアル・ルベド

推奨BGM:Thrud Walkure
*1推奨BGM:Einherjar Rubedo


「無事か……?」

「俺とエリーに問題はねぇ」

「私も……」

「先輩にクッションされて今にも死にそうです……」

 唯一正樹だけが瀕死だった。リーファは落ちる途中で確保したのが功を奏した。タンクプレイヤーとしてのライフの高さが幸いしたな、と正樹に関しては判断する。上を見上げれば十数キロ先の天井に開いた穴が見える。羅刹を使った切断と、そして螢の炎を使って一気にこじ開けて出来たこの穴―――リーファと正樹が咄嗟にヨツンヘイムの存在を思いだし、提案しなければ確実に防御に入ろうと思った。そして防御したところで耐えられるとは思えない。

 あのエレオノーレと名乗った女は別格だ。ベイすら生易しく感じる。

「螢……!」

 彼女が残ってしまった。確実な足止めが必要だとはいえ、あの強敵の前に置いてきてしまった。

「無事でいてくれよ……」

 今は祈るしかできない。


                           ◆

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| 断頭の剣鬼 | 10:18 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

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DAY1

 ―――あぁ、またか。

 気が付けばまたここから始まっている。

 胎児が最も安心できるここが―――母の胎内。全ての記憶はここから始まる。いや、終わったらここから始まるのだ。ここにきて、自らを思い出し……違う。この言い方も正しくない。思い出してなどいない。気づけば知っていた。そう知っていた。まただ。またこの感覚だ。何度味わったかはわからない。そればかりは覚えていない。だが明確に覚えているのは二回目だ。日本人の、最上明広として生まれた記憶が確かな既知感としてではなく記憶として残っている。胎内の中、羊水に包まれながら思考する事は一つ。

 あぁ、またか。

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EXTRA-5

 ―――4日目。

 セイバーは言った。

 慎二はアホだと。そして初戦の相手にはちょうどいいカモだと。それは三日目、うっかり無敵艦隊とキーワードを口から零した事で理解した。自分も段々と調子が乗ってきたのか、慎二をそろそろワカメと呼ぶかどうか迷い始める。もうここまで来たらそろそろ勢いよく踏ん切りをつけることが大事かもしれない。

 個人の個室となっている2-B教室から出て朝の情報収集を始めようと思ったところで、

「おや」

 二階の中央には見た事のある少年がいた。凛みたいに制服ではなく私服姿なのはおそらく情報を改ざんしているから。立っているだけで他者を魅了するカリスマを持つ少年は予選の時、少しだけ時間を共にした―――

「レオ君……?」

「あぁ、また貴女には会える気がするとは思っていましたよ」

 レオに注目が行くのもそうだが、その背後にいるサーヴァントも注目せざるを得ない。レオにも負けず劣らずカリスマ的なものを放っている気がする。見た印象から連想するのは清廉潔白という言葉。その視線を受けてレオがあぁ、と言葉を零す。

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殉教 ―――アイデンティティー

推奨BGM:Einherjar Rubedo


 エレオノーレがベアトリスを睨み付け、ベアトリスが真剣な表情のまま得物を首につきつける。ベアトリスの目は本気だ。一歩、いや、身じろぎさえすれば刃をエレオノーレの首に突き刺す覚悟ができている。それを察してエレオノーレも動かない。が、その代わりに、

「キルヒアイゼン。釈明を聞こうか」

「戒君と大体同じ理由ですよ―――私、情には弱い女ですから」

「この犬が……!」

 エレオノーレの瞳に怒りが宿り、そして首に僅かだが刃が食い込む。

「動かないで、と言ったはずです」

「ベアトリス!」

 螢がベアトリスの名前を叫ぶ。しかしベアトリスは一瞬たりとも視線をエレオノーレから外さない。

「……申し訳ありませんけど、説得されちゃいましたので」

 目の前の女傑はそれが刹那とはいえ、隙を見せた瞬間逆に主導権を握る事をベアトリスは付き合いから知っている。だから一瞬も気が抜けず、視線すら逸らす事が出来ない。実力でいえばベアトリスがエレオノーレに勝利できる可能性はないのだ。


                           ◆

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EXTRA-4

 アリーナに再び踏み込む。そこは変わらぬ第一層のアリーナ。敵は昨日セイバーと一緒に戦ったためにある程度動きを把握できている。だが踏み込んだ瞬間素人で記憶のない私でもわかる。誰かに今、見られていると。粘りつくような、少し厭味ったらしい視線だ。たしか言峰によればこのアリーナに入れるのは自分と対戦相手だけだ。だからこの視線の主は……

「ふむ、どうやら見られているようだな相棒よ」

 アリーナに踏み込むのと同時に完全武装したセイバーが現れる。昨日の夜セイバーが話したことが本当なら、セイバーに無理して戦わせるべきではないのだが、自分の力不足を補うために今は一つでも多く経験を積む必要がある。今日のアリーナの探索もまた世話になる。

 本日は二日目。

 発表された対戦相手は―――

「間桐慎二……」

「確か予選期間ではクラスメートだったんだっけ? 正直あの手のウザイタイプは無視するのが人生の先輩としてのアドバイスだけどね。下手に関わって調子コカせると後々面倒になるタイプだ。相棒もそこそこ可愛いんだから付き合う男は選ぶべきだよ」

「そこそこ?」

「うん。そこそこ」

「そこは素直に可愛いと言って褒めてくれる場所じゃないの?」

「惚れた女の方が比較するのも失礼なほど可愛いので」

「地味に傷つく」

「相棒よ、記憶はないのに女としての尊厳はある程度あるんだな」

 一応女性ですから。

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| 短編 | 20:30 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑

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殉教 ―――コラプス

推奨BGM:Kreig
*1推奨BGM:Einherjar Rubedo


 全速力で駆け抜けるルグルー回廊。

 ユイに言わせればあと一時間以上は歩く必要のある距離を、約数分で抜ける。現実と違ってこの世界で体に疲労は現れない。存在するのは精神的な疲労だけで、その精神的な疲労も言ってしまえば根性論でどうにかなる。故に驚異的な精神力を持っていれば、それこそ一日中走り続けていても全く問題ない。

 パラメーターが一般プレイヤーとは違って上限突破している俺達は、

 その精神構造も常軌を逸脱している。

 故に、疲れは感じない。

 数分で洞窟を抜けきると再び、太陽の光が見える。そこで一旦動きを止め、リーファと正樹が下に降ろされる。手で目に当たる太陽の光を遮り眩しさを堪えながら、やっと浴びる事の出来た日の光に感謝する。よくよく考えれば昨日は暗くなったらボトムレスピットへ拉致され、一回も外に出る事もなく再びダイブしてるのでリアルでも日の光を浴びていない気がする。

「ここから会議場までは?」

「数キロ先です!」

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| 断頭の剣鬼 | 09:10 | comments:7 | trackbacks:0 | TOP↑

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EXTRA-3

 踏み込んだ瞬間目に見える光景が今までの場所とは異なることが解る。

 NPCがアリーナと呼んで教えてくれた場所はセイバーと出会う前に、オートマタと共に駆け抜けたエリアに似ている。まるで光もない、海の底にいるような世界で、そこにPCのよるCGエフェクトを加えたような世界だと思う。

「ここがアリーナだな」

 と、セイバーが前触れもなく現れる。アリーナでは試練(タスク)をこなし、そしてここで出現する攻勢プログラムを倒しながら腕を磨かなければいけない。それは未熟なマスターとして最優先の義務だ。

「まあ、気負ってるのは解ってるけどあまり緊張しすぎるのも良くないぞ?」

 振り返れば両手に剣を持つセイバーが武装状態で待機している。そう、今の自分にはセイバーがいる。あの時オートマターを相手したような無様を晒す事はない、と思う。

「あ、ありがとう」

「おう」

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| 短編 | 19:08 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑

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殉教 ―――リ・スタート

推奨BGM:Bottomoless Pit


 頭が痛い。

 体を起き上がらせれば夜に聞こえていたホールのうるさい音楽はもうないが、その代わりにガンガンと頭を打ちつけるような感覚があり、音を出そうものならそれが響いて頭に激痛を生み出す。ここまで言えばもう解るかもしれないが典型的な二日酔いの症状だ。なんで未成年の身でありながらこんな事態になっているかというと、

 元凶はこの場所の主だ。

「よ、起きたか英雄さん」

「あぁ、おかげですこぶる調子がいいよ……」

「そりゃあ重畳」

 本気とも冗談とも取れる口調で言葉を放つのは遊佐司狼―――リアルでの遊佐司狼だ。都内のネットカフェでログインしていたはずの俺を拉致し、勝手に家へと連絡をつけてここ、司狼の所有するクラブの一つへと引っ張ってこられた。”ボトムレスピット”と呼ばれるこのククラブにだ。何を思ったのかログアウトして明日に備えるべきなのにいきなり酒を飲ましてきて―――それに溺れさせられ昨日は眠った。

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| 断頭の剣鬼 | 09:45 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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